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「なんという言葉を言うんだろうと思って、『やる』と答えた。普通だったら『給料をこれだけやるから、やって』と言う。でも、給料の話もしないでそういうことを言う。そのことにすごくロマンを感じた」
農地が管理できなくなる農家が増える、その受け皿になって農地を守ってほしい。そう言われたのだと感じ、その思いに違わないよう経営してきた。
新規就農で12haの農地を任せられ、勉強しながら生産した。集落の農家に教えを請うたり、荘内松柏会という農家同士で技術を高め合うことを目的とした会で苗の作り方を学んだり、地域情報雑誌の『農村通信』(酒田市の農村通信社が発行)を読んだりした。
米の里のある鶴岡市小中島地区は、一つの地域に十数haから数十ha規模の法人が三つある。周辺地域では一地域に1法人あればいいほうだそうで、珍しい土地柄だ。競争相手の多い地域にあって、よそ者ながら信頼を得るべく、努力を惜しまなかった。
信頼獲得に心を砕く
「普通、土地を貸すとなると地元の人間に貸す。自分は地元の人間じゃないから、皆に認めてもらうために、地域の水路の泥上げを率先してやった」
共同作業の泥上げに加わるのはもちろん、決められた日でなくとも作業した。地域のために汗を流したのが認められ、農地が集まるようになった。田植えがあまり遅くなると気にする地権者に配慮し、田植えを早めに終わらせている。今年の田植えは5月3~22日だった。大規模生産者だと田植えの期間が延びがちなのをあえて短くする。こうした気配りも同社への集積を促す要因のようだ。
そもそも地域的によそ者にも温かい部落だったのもあるという。当初は分散錯圃で苦労したが、1法人と土地を交換し合い、団地化が進んだ。この法人とは、集落内で互いにどちら方面に土地を広げていくかを決め、住み分けしている。
「大きいバイパスを境に農地を分けたので、作業の効率が良くなってだいぶ楽になった」
南北に10 km、東西に2kmの範囲に農地があり、新たに面積を増やしている最中の集落もあるため、分散錯圃の部分もある。そうした集落でも、ほかの農家と土地の交換をし合って団地化することを目指す。農地の半分近くを自社で所有する。農地を買ってほしいと言われたら基本的に買う。貸しはがしを防止する狙いがある。
1枚30aの広さの田んぼが多い地域で、合筆を進めている。1枚の大きさが60aを超える田んぼを増やす。まずは自社で所有する田んぼを合筆する。それを見ると、地権者も自分たちの田んぼの合筆にだいたい賛成してくれるそうだ。
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齋藤弘之 サイトウヒロユキ
(有)米の里
取締役
1978年、山形県鶴岡市生まれ。羽黒高校卒業後、自衛隊に入隊。山形市の農業用資材の製造・販売会社の営業職を経て、2008年に(有)米の里へ入社。17年、庄内の若手農家で作るグループ「F.A.I.N(ファイン)」を立ち上げる。グループの関連会社である(株)F.A.I.N代表取締役も兼任する。
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