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専門家インタビュー

土壌学者(ペドロジスト)に聞く農地の土壌との付き合い方 後編~土壌断面調査から読み解く土づくり~


――先生の土壌調査に立ち会えた方は、貴重なお話を伺えるというわけですね(笑)。
大倉 ハハハ。土壌調査は公共財だと思っていますから、どんな土でも平等に調査します。最近はいろいろなご縁をいただいていますが、現地に行ってみてガックリするケースもありますよ。
――泥炭地などがそうですか?
大倉 泥炭に限らないです。でも、土壌図で泥炭と分類されていても、実際には泥炭に客土しているのだから、泥炭土で作物をつくっているという言い方は正しくありません。それなのに、どうして土壌図には泥炭土のまま載っているかというと、泥炭土が公共事業の改良対策土壌だから。基盤整備が入って、山土や黒ボク土で客土して畑になっているのに、地力増進指定地域のまま解除していないんです。いつか再び公共事業が復活することを祈って、残しているんでしょうね。私にしてみれば、サボタージュなんだけど、確信犯的にやっていて……。
――そこには利権が絡んでいるわけですね。
大倉 そのあたりはエモーショナルになるところですね。土壌は公共財ですから。改良が必要な土壌に補助はあるべきだと思いますが、それを施策として実施する行政も、受益者として受ける側も、本当にみんなのためになると感じてやってほしいわけです。ところが、たとえば補助が5%つくからやってしまおうという工事が多いと聞きます。工事にオーナーシップがないということは、その土地にも、土壌にもオーナーシップを持っていないんですよ!
――鋭いご指摘ですね。最近は黙認するほうがスマートだという世の中になってきているように感じます。
大倉 こういうことばかり言うと、周りが敵だらけになるんだけど、科学的にはちゃんと言ったほうがいい。しかも、サイエンスは間違うこともあるので、間違ったときにはちゃんと責任をとって次善策を講じていく、研究を進めていけばいいと思います。
人命にかかわらない限りね。言わないほうが正しいってことになると、科学でさえ、ものが言えなくなるんですよ。そうなって欲しくないので、科学で正論を吐くということを私は続けていきたいなと。だから、現場のファクト(事実)としての土壌断面を前に話をしたいんですよ。
――先生が土壌断面調査を通じて、筋の通ったお仕事をされていらっしゃることが伝わってきます。
大倉 私に言わせると、世の中には角度のついた土管があって、ちっとも先が見えないんです。これでもまっすぐ進もうとして、あちこちぶつかりながらやっているんですよ。私が伝えたいのは、農家の皆さんにも、土地や土壌にオーナーシップを自覚して欲しいということです。

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