ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

さらにラウンドアップの風評を正す

前号で「ラウンドアップの風評を正す」という特集を組んだところ、多くの皆様より高評価を受けた。特集の内容を伝えるべく昆吉則のFacebook上に6月4日に投稿した。それなりに多数のレスポンスがあったものの、いつもの反応とは少し違うことに気づいた。それは、いつもならすばやく反応してくれる読者あるいはラウンドアップを使っている親しい読者が沈黙していることだ。ある人は「ラウンドアップ使っていると書くと売上は減るしテロにあう」と断って書き込みをしてくれた。また、ある親しい読者は電話で周りの反応を恐れていることを話してくれた。 農家に対するラウンドアップ反対派の心理戦はそれほど効果を示しているのだろう。本誌以外の農業メディアもまたラウンドアップに対する風評にはまったく触れようとはしない。最も安全性が高く、広く農家に使われているラウンドアップであるのに、農業メディアも恐れをなしているのだろうか。馬鹿げたことであるし、農業メディアとしての責任を放棄している。
そこで今号では、「さらにラウンドアップの風評を正す」と題して第二弾の特集を届ける。
前号に引き続き唐木英明氏に、そもそもラウンドアップに限らずこうした風評被害が出てくる背景を解説していただいた。ジャーナリストの浅川芳裕氏には、カリフォルニア州でのラウンドアップ裁判結果について分析してもらった。判決には、米国特有の訴訟ビジネスの側面があることが浮き彫りになった。その他、オランダでのラウンドアップをめぐる議論を紀平真理子氏に、米国アイダホ州で農業をしている村井誠一氏からも現地の様子を伝えていただいた。Facebookでの反応を含め、今号をお読みいただきたい。 (昆吉則)


【対談】風評被害にどう対応するか

公益財団法人食の安全・安心財団理事長東京大学名誉教授
唐木英明
農学博士、獣医師。1964年、東京大学農学部獣医学科卒業。同大学助手、助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員を経て、87年に東京大学教授、2003年に名誉教授。その後、倉敷芸術科学大学学長、日本学術会議副会長、内閣府食品安全委員会専門委員などを歴任。

【現代社会で風評被害が起こる4つの背景】

昆吉則(本誌編集長) いま、ネット上には除草剤ラウンドアップ(成分名:グリホサート)が危険だとする風評が飛び交っています。どんなに科学的な根拠を示しても、その風評がやむことはありません。唐木さんはBSE(牛海綿状脳症)やラウンドアップに関する風評被害問題にも取り組んでこられました。なぜこうした風評被害は後を絶たないのでしょうか。
唐木英明(食の安全・安心財団理事長) 風評被害はあらゆるところで起こっており、現代社会全体の問題です。風評被害の発生には二段階あり、第一段階が原因となる事件や事故の発生、そしてその対処・対策が受け入れられないときには、非科学的な風評が報道によって世の中に拡散してしまう第二段階に至り、風評被害が発生します。逆にいうと、対策について利害関係者の理解を得ておけば、風評被害の発生を抑えることができます。ただ、ラウンドアップだけは特異な事例で、原因となる第一段階の事件・事故がありません。原因がないのに反GM運動の一環で巻き添えを食わされているというのは、前号の記事で書いた通りです。
昆 風評被害の事例が増えていると思うのですが、その理由をどうお考えですか。
唐木 食品関係の風評被害の事例(表1)を見てください。これだけ風評被害が増えている背景には、現代社会の3つの大きな問題があります。ウルリヒ・ベックの著書『危険社会―新しい近代への道』で分析されていることですが、第一に風評を引き起こすのは放射能や化学物質といった五感では判別できないリスクで、その存在は専門家の調査分析を経て初めてわかります。戦争による破壊や飢餓といった以前の五感で判別できるリスクとは質が違うのです。専門家でないと判別できない現代社会の「見えないリスク」には、「専門家の判断が本当に信用できるのか」という問題が付随してきます。仮に専門家が安全・安心だと言っても、一般大衆がそれを自分で確認することは困難なので、不安が完全に消えるものではありません。そうした漠然とした不安が社会のあちこちに広がっています。

関連記事

powered by weblio