ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

特集

さらにラウンドアップの風評を正す


あとは、その潜在的な危険性をモンサントは以前から認識していたのに、ユーザーに告知する義務を怠った「過失」やその「悪質性」を印象付ければ勝ちだ。とくに故意の悪質性が認められれば、賠償額は企業に対する懲罰目的で高騰する傾向にある。
弁護士が過失と悪質性の根拠として挙げた証拠が二つある。一つは、1983年、モンサント社にバイオダイナミックス社から納品された実験ペーパーの内容(マウス実験でがんとの因果関係を示唆するものらしいが、原文が公開されておらず、詳細は不明)及びグリホサートの安全性を示す論文がモンサント関係者であるゴーストライターによって執筆されたという疑惑である。この二つの証拠を組み合わせ、以下のようにモンサントを非難した。
モンサントは1983年から長年にわたり、グリホサートのがんとの科学的な関連性を認識しておきながら、ユーザーに対して警告を発しなかったばかりか、会社ぐるみでゴーストライターを使い、その科学的な事実さえをも隠蔽してきた。その結果、死に絶えているのがジョンソン氏であり、ほかに同じ病に侵された数千人の人々がいる。
これで勝負あり、だ。いくらモンサントが科学的な事実に基づいて反論しても、そのモンサントこそが私利私欲のために科学を蹂躙した張本人だと完全に反駁されてしまった。
陪審員は完全に説得され、全員一致で原告の主張をすべて認定した。
下の画像をご覧いただきたい。今回の取材で入手した本裁判の評決書である。評決に至る設問は1から17まであり、損害賠償金額を記入する欄(問い14と17)以外は、すべてYESかNOをチェックする方式となっている。陪審員の回答はすべてYESにチェックが入っていた。
設問の内容を要約して示す。
1から3はラウンドアップの「設計上の欠陥」(その結果、実質的に原告は危害を受けたかどうか)、4から8は同「警告上の欠陥」(潜在的な危険性について科学的に知りえていたか。その危険性を警告したか)、9から13は「警告上の怠慢」(ユーザーが危険性を知りえないことを認識していたか)、14は「原告が被った損害額」、15と16は「懲罰的な賠償」(モンサントの故意・過失に悪質性があったかどうか)、17は「懲罰的な賠償額」となっている。記入された額は2億5000万ドルである。聞きなれない言葉が多いが、これは過失による不法行為を立証するベースに米国特有のPL(製造物責任)法の概念が入っているからだ。

関連記事

powered by weblio