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特集

さらにラウンドアップの風評を正す


それにしても、どうやって数千人を超える訴訟を起こせるのか。インターネットを通じて広く宣伝を行ない、できるだけ多くの原告を募るのだ。リッツンバーグ氏の宣伝コピーはこうだ。
「もし、あなた自身あるいは愛する人がラウンドアップに接触したことがあれば、補償される権利を有するかもしれません」「あなたが有利な判決を勝ち取るために、私には独自の勝利の方程式があります」「ほかの多数の弁護士事務所も同様の広告を出していますが、モンサントを相手取ってラウンドアップ裁判に集中できる弁護士は私を筆頭に数人しかいません」(リッツンバーグ氏の弁護士事務所のオフィシャルサイトlitzenburgcancerlaw.comから抜粋)
宣伝コピーのすぐ下には弁護士にコンタクトできる記入欄がある。氏名とメールアドレス、電話番号を入力し、クリックするだけだ。あとで詳しいアンケートに答え、所定のフィーを振り込めば、原告になれる。
宣伝がうまければ、原告が殺到するかといえば違う。訴える相手に巨額の賠償金を支払う能力があるかどうかが大きなポイントだ。その点、請求相手としてモンサントは申し分ない。収益性の高い農薬・GM種子大手であるばかりか、親会社にはさらに巨大な化学企業のバイエルも控えている。訴訟コストに対し、勝訴したときに大きなリターンが期待できる。
とはいっても、リターンが大きすぎないか。三度目の裁判では原告1人につき10億ドル(約1100億円、夫婦で20億ドル)を超える損害賠償金を勝ち取っている(注:ただし、のちにその妥当性を判断する裁判官が減額するケースが多い)。その額は今年最大の賠償金で、米国裁判史上でも8番目となる。
10億ドルを陪審員から引き出した弁護士ブレント・ウィズナー氏はそのカラクリを明かす。
「私は実際に10億ドルを要求したわけではありません。原告がラウンドアップを使用した最後の年、モンサントの利益が8億9200万ドルであることを陪審団に示し、こう申し上げました。『あなた方は原告にがんを引き起こしたモンサントに対し、いくらの懲罰を下すべきか。彼らの利益額以上であるべきです。モンサントの科学者はこう言っています。我々ががんを起こしたとしたら、10億ドル級の大問題になる』。私が申したことはそれだけです」(LAW・COMのインタビュー記事から抜粋)」
実際の損害とはなんの関係もない。ただの誘導尋問である。しかし、陪審員の感情を揺さぶり、ある種の良心に訴えるには十分だった。事実、弁護士が誘導した額を判決文に書かせることに成功したのだ。

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