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特集

さらにラウンドアップの風評を正す



【裁判は科学ではない】

今回の勝訴で、ウィズナー氏は一躍「全米トップ弁護士100人」に選出されている。大企業を相手に巨額の賠償金を勝ち取り、スター弁護士の道へと駆け上がったのだ。
一方、敗訴したモンサント側の弁護士は次のコメントを繰り返すだけだ。
「世界の主要な規制当局は、グリホサートを主成分とする製品は安全に使用でき、グリホサートに発がん性はないという認識で一致している」
それならば、どうして裁判で負けるのか。一言でいえば、裁判は科学ではないからだ。カリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院のデイヴィッド・レヴィン教授はこう述べる。
「今回の裁判が示したことは、陪審員にとって、本質的に科学的な問いに対して判決を下すことがいかに難しいかだ」(AP通信)
がん疫学の権威ケンブリッジ大学ポール・ファロア教授も同様の見解を示す。
「純粋に科学的観点からすると、今回の判決は理にかなっているとは思えない。グリホサートががんのリスク増加に関連しているという疫学的証拠はきわめて弱い」(英ガーディアン紙ネット版2018年8月14日版)
法学、医学の専門家が科学的ではないという裁判は一体、何を根拠に展開されているのか。
裁判はそもそも、科学的な評価をする場ではない。裁判書類の冒頭に書いてある通り、「不法行為」に基づく「人身被害」に関する損害賠償請求訴訟である。
不法行為とは何か。「過失によって他人の権利や利益を侵害すること」である。人身被害とは何か。文字通り、人が身体に被った被害のことだ。
整理すると今回の裁判は、人身被害=「人(原告)が病気になった」ことに関し、その不法行為=「その責任が被告(モンサント)の故意や過失にあるかどうか」を争うものなのだ。そして、被告が敗訴した場合、不法行為に基づく民事訴訟では「損害賠償金」を支払うことになる。
念を押すが、ここでの過失とはラウンドアップの発がん性の科学的評価ではない。立証すべきは、製造責任者である被告の過失によって不法行為が成立しているどうか、である。

【ラウンドアップの潜在的危険性について警告を発していなかった、という原告の主張が通る】

では、アメリカ不法行為法と判例において、過失はどう立証されるのか。その成立要件がある。「注意(警告)義務の違反/怠慢」があったかどうか、である。それを判定する基準が三つある。一つ目は、被告は商品の「潜在的な危険性について認識」していたかどうか。二つ目は、その危険性が及びうる人々が「合理的に予見可能な範囲」にいたかどうか。三つ目は、被告の商品が「実質的に損害を与えた可能性が高い」かどうか、である。

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