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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第6回 山形ブドウ100%の日本ワイン「ワイン特区」で地域振興をめざす(山形県上山市)
- 評論家 叶芳和
- 第26回 2019年06月28日
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現在、特区を活用したワイナリーはない。予備軍は7人いる。それぞれ、ブドウ栽培を始めており、まだ収穫前なので、原料ブドウを購入して委託醸造でワイン造りをしている。ただし、一番手のベルウッド社は特区を活用せず普通免許で新規参入する予定。特区は下限2キロリットルでの参入であり、売上高600万円では自立できないからだ(後述参照)。特区の活用は副業としてのワイナリー参入しかできない。筆者はこの「特区」には格別な興味を持っている(注)。
注:特定地域に限って規制緩和する「特区」概念は当初、筆者が提案したものである。1991年の第3次行革審で、明治の中央集権化以来初めて、規制を緩和し、地方分権を可能ならしめるための仕組みとして提案した。しかし、霞が関の抵抗ですぐには実現しなかった。10年経って、小泉内閣で「構造改革特区」、そして安倍内閣で「国家戦略特区」として実現した。しかし、行政改革は「国から地方へ」「官から民へ」という二つのコンセプトから成ってきたが(第1次臨調〈土光臨調〉以来)、両特区とも“地方分権”がない。拙稿初出論文は「行政改革の『開放区』をつくれ」『週刊東洋経済』1991年9月21日号。
2 創業以来100%山形ワイン――(有)タケダワイナリー
上山市には歴史の古いワイナリーがある。(有)タケダワイナリー(岸平典子社長)は1920年(大正9)の創業で、近々、百周年を迎える。東北では2番目に古い。
同社は創業以来、“100%山形県産ブドウ”の日本ワインを造っている。日本のワイナリーとしては特筆に値することだ。原料ブドウは、自社畑15haと契約栽培(約40軒)で供給し、年産30~35万本(750)のワインを生産している。
自社畑は、20年の歳月をかけて酸性土壌を中性から弱アルカリ性に変えるなど土壌改良を行い、自然農法栽培(過剰な施肥を排除し、自然のサイクルを最大限いかした、減農薬、無化学肥料)によるブドウ栽培を行なっている。品種は欧州系のワイン専用品種で、カベルネ・ソービニヨン、メルロー、シャルドネ等を、垣根仕立で栽培している。10a当たり単収は約1tである。
契約栽培は上山市と天童市に約40戸ある。上山市では主にデラウエア種、天童市では主にマスカット・ベーリーA種を栽培している。各20戸。サクランボやラ・フランスとの複合経営農家である。単収は1.2~1.7t。契約農家の収入を保証するため、自社畑より単収は多い。ここで作ったブドウは同社のレギュラーワイン「蔵王スター」(1本1200円)の原料として使用してきた。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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