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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第6回 山形ブドウ100%の日本ワイン「ワイン特区」で地域振興をめざす(山形県上山市)


なお「蔵王スター」ワインは名前を変え、2017年11月蔵出しから「タケダワイナリー」ブランドに変わった。18年10月の表示規制に対応するためである。「蔵王スター」の原料は上山市と天童市から供給しているが、天童市は昔から蔵王山麓とみなされてきたものの、現在の行政区画上では蔵王山麓から外れているからである。表示規制の趣旨を尊重し、「蔵王スター」ブランドを廃することに決めたようだ(タケダワイナリーは7501本1600円)。

品質ブラッシュアップ
岸平典子社長は品質向上に取り組んでいる。05年社長就任は業界初の女性の代表取締役兼栽培醸造責任者として話題になった。栽培と醸造の責任者も兼ねた理論家女性社長である。小さい時からワインに魅せられ、玉川大学農芸化学科(微生物学専攻)卒業後、渡仏し、国立大学で栽培・醸造学やテイスティングの研修を受けた。
岸平社長は1994年に帰国、父のやり方は古いと批判し、引退させた。父の時代は「目指せフランス!」であったが、岸平社長は風土に合ったワイン造りを目指している。「土の特性、気候の特性を掴んでそれを活かしたブドウ作り、ワイン造りをしていきたい」「それを見つけるには、自然と共に、体と頭と感性……五感をフルに使って仕事をすることでしょうか」と語る。
ワイン業界にはドラスチックな変化はない。岸平社長が目指しているのは、「父が作ったものを磨き上げる」ことである。ブドウ作りも、醸造工程も、細かい作業でブラッシュアップする。
例えば、日本で古くから栽培されている品種の見直し、地位向上もその一つだ。従来、ベーリーAも、デラウエアも、お土産用の甘いワインの原料に使われ、低く見られてきた品種であるが、そこから脱却めざした。デラウエアを原料に「ペティアン」と呼ばれる微発泡性ワインを開発した(商品名「サン・スフル〈白・発泡〉」)。レギュラーワインの1600円に対し、サン・スフルは2000円で売られている。また、マスカット・ベーリーA(古木)を樽熟成させたワインは、欧州系品種並みの価格3500円だ。デラウエアの樽熟も3500円である。
タケダワイナリーは、日本ワインコンクール等の入賞記録はない。出品しないからだ。岸平社長は「コンクール用の味がある」「香りがあって、インパクトのあるワインが賞を取る」「うちは1本テーブルに置いて、美味しく飲めるワインを造る」。つまり、思想が違うから出品しないという。

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