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【農業は先進国型産業になった!】
日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第6回 山形ブドウ100%の日本ワイン「ワイン特区」で地域振興をめざす(山形県上山市)
- 評論家 叶芳和
- 第26回 2019年06月28日
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2008年の北海道洞爺湖サミットでは、タケダワイナリーの2銘柄がワインリストに並んだ(注:サミットで提供されたワインは16銘柄)。同社のワインが世に知られるきっかけになった。
筆者が「日本ワインは美味しくないという消費者が多い」と挑発的に質問すると、世代の違いもあるという。年配者には「フランスワインが美味しいという味の“刷り込み”がある」「脳で飲んでいる。日本ラベルを見ると美味しくないというバイアスがかかる」。しかし、今の30代、40代の若い層はこの先入観がないので、日本ワインを美味しいと飲んでいると指摘する。
確かに、ワインについての嗜好は変化している。世界的に、やさしい味が流行る方向にある。また、和食に合うワインが求められていることもあって、日本ワインが支持されてきている。ただし、まだスタンダード向上の余地は大きいと思われる。1990年代の米国カリフォルニアのように、大いなるイノベーションが期待される。
3 クラウドファンドで体験型ワイナリー――ベルウッドヴィンヤード
新規参入である(上山市久保手地区)。ワイナリー創業に向け頑張っている段階である。鈴木智晃氏(1977年生)は隣町の「朝日町ワイン」で20歳から19年間、醸造と栽培の担当で働いてきた。しかし、「朝日町ワイン」は年間30万本と規模が大きく、自分が作りたいワイン造りができなかった。日本はワインブームになってきたので、自分で育てたブドウで自分の考えるワイン造りがしたくてスピンアウトした。
特区制度を利用した参入も考えたが(年間最低製造数量が6キロリットルから2キロリットルに緩和される)、特区は利用しない。特区は小規模で参入できる利点はあるが、2ではワイン3000本しか作れず、1本2000円とすると、売上高600万円にしかならない。これでは自立した経営にはなれない。本業は農家でワイナリーが副業の場合しか、特区は意味がない。鈴木氏は特区ではなく、最低1万を計画している。
当初、山形市で土地を求めたが、適地がなく、市役所も新規就農に積極的でなかった。2016年、「かみのやまワインの郷プロジェクト」協議会(15年開始)を通して、デラウエア畑と耕作放棄地(元ピノノワール畑)の農地1haを借地し、すぐ植栽した。
単収は10a当たり800kgの計画。欧州系品種の垣根仕立である。地代は10a当たり1万円。また今年、ワイナリー用地として水田を21a購入した(10a当たり60万円)。ブドウ園から100mと近く、道路接道なので、高かったが買った。農作業体験型ワイナリーを計画しているからだ。近いほうがいい。
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叶芳和 カノウヨシカズ
評論家
1943年、鹿児島県奄美大島生まれ。一橋大学大学院経済学研究科 博士課程修了。元・財団法人国民経済研究協会理事長。拓殖大学 国際開発学部教授、帝京平成大学現代ライフ学部教授を経て2012年から現職。主な著書は『農業・先進国型産業論』(日本経済新聞社1982年)、『赤い資本主義・中国』(東洋経済新報社1993年)、『走るアジア送れる日本』(日本評論社2003年)など。
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