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【土門「辛」聞】
まだまだ不安をぬぐいきれないドローンによるスマート農業
- 土門剛
- 第178回 2019年06月28日
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「精密農業」は農業現場で受け入れられるか
ナイルワークスは、「Nile-T19」をソニー系列のパソコン・メーカー「VAIO」(長野県安曇野市)に生産を委託。パソコン業界メディアのPC Watchは、5月27日付けで生産について「今年は100台、来年は500台、2年後には2000台を目標」と報じている。
注目すべきは、誰が「Nile-T19」のローンチ・カスタマー(後ろ盾となる顧客)になるかだ。現時点で明らかになっているのは、販売元締め役が、全農と住友商事の2社。どちらもナイルワークスへ出資している。ナイルワークスは、農協ルートと非農協ルートの二方面作戦での販売戦略を立てているようだ。
農業現場で「Nile-T19」が受け入れられるかどうか。すべてはユーザーたる農業者が決めることだ。彼らが判断するのは、価格と性能に加えて、精密農業なりスマート農業に対する受容度にある。まず価格と性能についてカタログ・スペックやメディアが伝えた情報などから分析、次いでスマート農業が抱える基本的な問題点に触れてみたい。
まず価格。同社ホームページには価格についての記述は何もない。3月19日付け農業協同組合新聞が、基本的にはオープン価格とした上で、参考価格は「550万円(本体約500万円、保守約50万円)」と伝えている。ナイルワークスは、製品カタログに掲載した「基本セット」に保守費用を含めた価格と説明。セットの中身は次の通りだ。
「(1)機体(生育監視カメラ付き)1機、(2)ドローン用バッテリ2個、(3)ドローン用バッテリ充電器1台、(4)基地局1セット、(5)測量機1セット、(6)基地局&測量機用バッテリ2個、(7)基地局&測量機用バッテリ充電器1台、(8)操縦用タブレット1台」
日本国内で7割以上のシェアを誇る中国DJI製農業向けドローン「AGRAS MG-1」との違いは、機体に生育監視カメラがついていること。ナイルワークスが売り物とする生育診断や収穫予測に必要な撮影のためだ。散布作業中心の「AGRAS MG-1」は、一般的には、ドローン操縦の講習費用を含めて税込み240万円程度で販売されている。
単純な比較はできないが、両機を比較した宮城県内の農業関係者は、「機体の完成度は圧倒的にDJI製に軍配が上がる。問題は生育診断や収穫予測の機能をどう評価するかだ」と感想を漏らす。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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