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新・農業経営者ルポ

地域に愛される養豚業を目指して


阿部は、飼料のほとんどが海外からの輸入品なのを、なんとか国産の割合を高めたいと考えた。日本の食料自給率を上げるには、日本のものを食べさせなければという思いと、アメリカから飼料が来なくなったら何を与えるのかという不安があったからだ。とはいえ、エサ代は豚を育てるのにかかるコストのじつに半分を占めており、高価な国産飼料の割合を高めるのは簡単ではなかった。

地域一体となってブランド豚開発

一方で、町内の稲作農家は生産調整に協力しながらも、転作で別の作物を作るよりはコメを作り、農地を水田として使い続けたいと考えていた。その点、飼料用米であれば生産調整にカウントされる。山辺町はじつは豚の飼育頭数がかなり多いと知った農家らは、山形ピッグファームに飼料用米を使ってもらいたいと考えた。
折しも、アメリカでバイオ燃料の需要が高まり、輸入トウモロコシが高騰したタイミングだった。数軒の農家から、コメを豚のエサに使ってもらえないかと相談を受け、阿部は二つ返事で承諾した。
飼料用米は補助金を使えば、輸入飼料より少々割高にはなるが、それなりに安く買うことができる。農事組合法人や飼料会社、山辺町、山形県食肉公社などと連携し、08年にプロジェクトを立ち上げた。
3種の原種豚を掛け合わせた三元豚に出荷前の2カ月間、穀物飼料にコメを12%加えたエサを与える。育った豚の特徴は、豚特有の臭みがなく、上質な脂の甘みがあること。コメを食べることで、酸化の原因とされる多価不飽和脂肪酸が少なくなるからだという。通常の豚肉よりも軟らかくなり、脂の質が向上して食味が増すことを、理化学分析をして数値で示した。
豚舎から出た糞尿は完熟堆肥にし、稲作で使ってもらう。09年に収穫したコメを飼料にし、10年に舞米豚の出荷を始めた。町内の生産者が連携して育てた豚で、かつ循環型の農業をしているというストーリー性とおいしさで、町内外での認知度が高まっている。住民から「豚の町、山辺だよ」「山辺は豚だよ」と言われるようになった。
舞米豚という名前は公募で決めた。おいしいコメを食べ、あまりのおいしさに舞い踊る豚をイメージしている。山辺町には、町制の施行50周年を記念して始まった「やまのべ舞祭」がある。この祭のイメージを、ブランドイメージに重ねた。
主に町内のスーパーで販売しており、町内外のホテルや料理店で提供される。六次産業化もしており、食肉加工業者のドイツで修業した職人が作ったハムやウインナーも販売されている。これは保存料や着色料、増粘剤を使わないこだわりの品で、評判は上々だ。

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