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新・農業経営者ルポ

地域に愛される養豚業を目指して



消費者の顔が見えるように

舞米豚には思わぬ効果もあった。
「以前は、自分たちの育てた豚の肉がどこで買えるかわからなかった。舞米豚を始めてから、社員たちが自分の作った肉を買えるようになった」
同社で豚を出荷した後、山形県食肉公社が屠畜し、食肉に加工する。養豚では県内最大だから、スーパーで売られている肉にも同社のものが入っているはずだ。しかし、棚に並べられたパックからは、どれが自分たちの育てたものかがわからない。社員から「頑張って豚を生産しているが、どこで買えるんだろう」と聞かれ、答えられずにもどかしい思いをすることが少なくなかった。
その点、舞米豚は一目でわかる。地域住民が生産者である同社を認識するようになったのに加え、社員の側にも消費者の顔が見えるようになった。大規模化に伴い、消費者と生産者の距離が遠くなることはままある。同社の場合、その悩みを舞米豚で解決した。舞米豚は「地域とのつながり、人とのつながり、命のつながり」を体現する存在だ。
「社員が仕事にやりがいを感じ、楽しみを持ちながら働けるようになった」
販売開始の翌11年から、舞米豚にちなんだ祭を開いた。目的は、地域への感謝、食育、社員共育(共に育つこと)にある。阿部が仕掛け人となり、当初は「舞米豚祭り」という名前で、社員が手づくりで企画を練り、会場を設営し、運営した。子豚と親豚が50?mのコースを走るレースをしたり、子豚との触れ合い撮影会を設けたり、舞米豚のバーベキューを振る舞ったりした。大人も子供も楽しめる祭は地域住民に好評だ。
豚と触れ合えるようにしたのは、消費者や地域住民との距離を縮めたいからだった。阿部が小さいころ、近所には10軒ほど豚舎があり、当然のように豚に触り、豚舎で遊んだ。それが家業に入ったころには地域から豚舎が消えようとしていた。豚といえば、スーパーに並ぶパックに入った肉しか知らない人たちに、生きている豚の体温やにおい、かわいらしさを感じてほしいと考えたのだ。
「切り身になっているのだけが豚じゃないということを、小さい子供も含めていろいろな人に知ってもらいたい」
実際、豚と触れ合った子供たちは「かわいい」「あったかい」と喜んでくれる。ただ、いまでは防疫の観点から、豚との触れ合いはしていない。「やまのべ・まるごと・フェスティバル」として、町の中心部で社員が出し物をしたり、バーベキューを振る舞ったりしている。祭の開催は、地域住民に同社に親しみを感じてもらうだけではなく、社員のモチベーション向上にもなっているのだ。

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