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特集

山菜を農産物に


「自分で食べるのに栽培した。伸びが少ない、分けつが少ない、そういうのは避けた。岩手山から採ってきたのは首を絞めるような味だったな。辛みと甘みのバランスがいいと美味しくて味が濃い」
200株から選抜して栽培していたが、1975年ごろ、さらに良い株を見つける。葉しょう部が太くて軟らかく、2枚の本葉が揃って出る株だ。それから40年以上、その一株を増やしてきた。
近年は、天然のギョウジャニンニクを採る人が増え、山に入ってもなかなか採れなくなっている。
「みんなして採ってしまって。育つのに年数がかかるから。2、3年前からはとくに少なくなって、ほとんど見つけれなくなってきた」
40年以上かけて栽培してきたことが、いま功を奏している。

■ ウルイ
ウルイは、1958年ごろ、実家の近くの里山で見つけたものである。茎葉が軟らかく美味しい。ウルイは種類が多く、野生種のなかには交雑した可能性のある種もあれば、同じ種でも個体差があって、味も見た目もさまざまだ。遠藤氏は、岩手県内各地から100株ほどのウルイを集めて栽培し、最初に目を付けたウルイと比較した。すると、やはり最初に見つけた株が、ほかのものに比べて軟らかくて味が良いと分かった。確信を得ると、その一株から株を増やし、1970年ごろからは促成栽培して販売しはじめた。これが、いまの「八幡平みどり」である。

■ フキノトウ
1998年、遠藤氏は直売所で形が良い天然ものが売られているのを見つけた。買って食べてみると苦みが少なくて美味しい。そこで、販売者を訪ね、近くを流れる松川沿いに自生していたと聞く。遠藤氏は教えてもらった場所に行き、近辺のフキの地下茎を7系統ほど掘り起こして持ち帰って畑で選抜を始めた。
「違うのはな、ほとんどアク抜きしなくていい。(選抜した理由は)収穫時期とか、収量とか、そういう問題」
フキノトウは、芽吹いたばかりで花茎が幼く、花茎を包む「ほう」と呼ばれる葉が多いほど美味しい。遠藤氏は、「ほう」が薄くて細く、枚数が多い一系統を選んだ。枚数が多ければ、美味しいだけではなく、収穫時に外側の傷んだ葉を数枚はがしても大きさに影響がないと考えたからだ。選抜を重ね、2008年ごろには、苦みが少なく、「ほう」の枚数が多く、形も良いフキノトウを安定的に栽培できるようになった。

【作物としての特長を見極めて品種登録】

遠藤氏が育成してきた4品種に注目し、品種登録に導いたのが、当時、普及指導員を務めていた髙橋寿一氏である。農場で育成のいきさつを話していた遠藤氏は、ふと、一緒にいた髙橋氏に顔を向け、嬉しそうに言った。

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