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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第7回 日本の食文化を表現世界と勝負するワインをめざす ドメーヌ タカヒコ(北海道余市町)


スマート氏は、キャノピー・マネジメントという考え方を取り入れた人物である(1960年代提唱)。ブドウの木の植栽密度、新梢を何本伸ばすか、その長さや選定の仕方などを、気象や土壌成分のデータと共に関連付けて、数値化した。つまり、科学的分析の上にブドウ栽培を行なうアプローチだ。曽我氏はスマート氏から大きく感化され、「ブドウ栽培とは何か」を深く模索し続けたようだ。
こうしたキャリアの故であろうか、曽我氏は立地、栽培、醸造、いずれの場面でも、選択、意思決定はサイエンスに拠っている。

なぜ余市だったのか?
ココファームで栽培担当していた時、ココファームはカリフォルニアに農場を所有しており輸入ブドウも使っていたが、当時、日本ではすべて国産ブドウに変えようという議論が出ていた(筆者注、2002年論争、04年から日本ワインの流れ)。そこで、日本各地のブドウ畑を見て回った。最後に勤めていたのが北海道であり、質のいいブドウができることを知った。品質の良さに驚いたという。
なぜ、余市を選んだのか? 先に述べたように、余市は世界のワイン銘醸地と同じ条件であることを確認した。涼しいので良いブドウができる。北海道はクールクライメイトである。その上で、十勝は凍害のリスクが大きいので最初の段階で除外した。函館、岩見沢は積算温度は1200~1300℃と余市と同じだが、函館は収穫期に霧が出るリスクがあり、また台風も来る。岩見沢は冬零下20℃以下になり、しかも雪が少ない年もあり凍害リスクがある。
これに対し、余市は冬季は雪に覆われ(vs十勝)、また霧、台風がなく(vs函館)、冬もマイナス15℃止まりで降雪も安定している(vs岩見沢)。つまり、余市は一番、安定している。
ブドウの大敵は雨である。余市も、梅雨はないが秋雨はある。しかし、北海道の収穫時期は10月10日~30日であり、その頃は寒い(10℃以下)。収穫期が寒いと、光合成だけやって、雨が降っても水を吸わない。この時期の雨は問題なし。
つまり、余市は安定した条件を持っている。質の良いものを安定して作れる。暖流の影響で比較的温暖で、気象条件が優れているのが余市だった。積算温度、雨がない、秋雨はあっても問題なし等々、調査研究の成果の上で余市を選んだ。8年間、畑を何処にするか模索した。親の代からの土地でワイン造りを始めたわけではない。出生地の長野をはじめ、山形、福島、北海道と、ブドウ畑の候補地は50以上に上った。しかし、一番条件のいいのは余市だったのである。

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