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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第7回 日本の食文化を表現世界と勝負するワインをめざす ドメーヌ タカヒコ(北海道余市町)



4 科学と自然のリズム

曽我氏は「日本の食の美しさを表現できるワインを醸したい」「瓶熟では日本の四季を表現できるワインが理想」と語る。感性の世界を強調している。また、何も手を加えないことをモットーにしており、「科学」と対立すると思う人もいるかもしれない。しかし、筆者には両者に矛盾はない。繊細なワインを醸すには科学的アプローチが必要だ。
既に見てきた通り、曽我氏は立地、栽培、醸造、どの場面でも、昔から親の代からやっている技術に拠っているのではなく、科学的根拠に基づいて決めている。
化学肥料や農薬を一切使わないビオロジックのほうが土の中の微生物の活動が活発になり、ブドウの木が持つ生物的能力を引き出し、繊細なワインができる(これが科学的知見である)。火入れをしないほうがブドウの持つ本来の香りが保たれていてよい。全房発酵のほうが醸造時の温度変化が緩やかになりワインに複雑な風味がある等々。そういう知見をもたらすのが「科学」である。自然の法則を解明するのが科学である。したがって、科学的分析の知見に基づいてワイン造りをするほうが、自然のリズムを活かし、ブドウの木の持つ本来の能力を100%引き出して美味しいワインができる。科学は自然のリズムを引き出す役割を果たしている。曽我氏は「科学する醸造家」に一番近い醸造家のように思える。
経営に目を転じると、醸造場は機械が少ない。曽我氏は「自分は金をかけていない。ケチなワイナリー」と言う。ポンプがない。除梗の機械がない。ステンレスタンクがない。樽も新樽は使わない。新樽は樽の匂いでワインが臭い。ステーキを食べるときはいいが。繊細なワイン造りには匂いがつく新樽は合わない。フランス等海外から中古を買ってくる。新樽は15万円位するが、中古は5万円である。小布施の兄貴からももらう。ワイナリーの初期投資は1000万円で済んだ(土地取得費は1600万円)。
曽我氏は自分のワイナリーは「農家の味噌、漬物」と言う。日本ワインの最大手「北海道ワイン」(小樽市)は「キッコーマンやマルコメの味噌、醤油」という。わかりやすい比喩だ。農家の延長線上で、自分と家族の幸せを考えて、農夫としての個性をしっかり出したワイン、風土を生かした自然なワインを造っていくという。
規模についても哲学がある。面積は増やさない。うまみを感じるワインを醸し、付加価値を高める方向で勝負する。日本のワインは1本1万円の時代が来るとみている。日本ワインで、面白いワインがある。曽我氏のところにも、月2~3件、海外から問い合わせがあるようだ。

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