ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第7回 日本の食文化を表現世界と勝負するワインをめざす ドメーヌ タカヒコ(北海道余市町)


また、「小規模ワイナリー」を美しいと考えている。それぞれが特徴を出すことで、小規模で個性的なワイナリーが地域に沢山出現するのが好ましいと考えている。
「北海道に200万規模が1軒あるのと、うちみたいのが100軒、これで100万の生産はどっちが面白いか」という比較である。小規模の定義を1万とするなら、持続可能かもしれない(注:1万規模は現状価格なら、売上高1500万~2000万円)。
筆者コメント:小規模(仮に6未満)は持続的か。規模の利益が小さく、規模拡大しなくても競争市場でやっていける場合、小企業の集積は多様性に富み面白いと思う。しかし、通常の産業は(農業の場合も)、そういう思いはあっても、なかなかそうはいかない。市場原理の下、淘汰されていくことが多い。稲作をはじめ、農業分野は規模拡大して残っている。ワインの場合は逆に、個性が競争力をつくる側面があるので、あるところまで可能となるのではないか。仏ブルゴーニュはそういう様相を見せている。しかし、日本ではまだ検証できない。現状の日本ワインは価格が高いので、美味しくて安い輸入ワインの情報が完全な市場になれば価格が下がり、小零細規模でどこまで残れるかはわからない。1万円のワインを醸すことができる限られたワイナリーだけが小規模で残れるのであって、小規模のままサバイバルし産業を形成することは困難かもしれない。恐らく、後継者難に直面するであろう。

5登小学校児童の9割が新規就農の子弟

曽我氏は、ワインは自己表現ができる産業と強調する。ワイナリーは1万本の小規模でも世界に自分をアピールできる。野菜でいくら努力しても無理だ。若い人が参入するのも、自分をアピールできるからだ。
若い人たちの研修を受け入れている。余市は面白いよと発信して、ワイナリーを増やす。過疎化地域に若い人の参入を誘っているわけだ。
曽我氏が余市にワイナリーを開いたのは2010年である。ドメーヌ タカヒコで研修した若者たちも、登地区で次々とワイナリーを起こした。余市は気象条件が良いだけではなく、山梨や長野に比べまとまった面積の農地を取得しやすいので、質の高いワイン造りを目指す人たちが余市に集まってきた。
表3に示したように、余市町と仁木町を合わせると14のワイナリーが立地している。新規参入の予備軍も多い。
典型的な中山間地帯にある余市町立登小学校は、全校児童数10人である。うち9人は新規就農者の子弟である(19年度)。古くからの住民だけであれば、小学校は廃校に追い込まれていたであろう。ワイナリーの進出が地域を救った。

関連記事

powered by weblio