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【土門「辛」聞】
食品Gメン気分でみつけた「まずぅW」カップヌードル
- 土門剛
- 第179回 2019年07月31日
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リールで再認識した燻製の素晴らしさ
食品保存法は温度帯によって違う。寒冷地帯は塩につけるか燻製にして保存。温暖地帯は発酵による保存。微生物が役割を果たす。寒冷地はその微生物が使えず塩蔵か燻製による保存に頼ることになるのだ。
寒冷地帯でも違いがある。日本は塩蔵が主なのに、ヨーロッパは燻製も幅を利かしていることだ。ひるがえってわが寒冷地帯で伝統的な燻製による保存食品に何があるかと思いめぐらせてみると、秋田県内陸南部地方に伝わる「いぶりがっこ」ぐらいしか思いつかないだろう。
リールという町は北海に沿ってオランダから北フランスへ拡がるフランドル地方に属する。ベルギーとの国境へは約10キロ。旧市街は、同じ地域圏のブリュッセルやアントワープを思わせる風景。街歩きしていて目にとまったのが、「バルビエール」という洒落たレストラン。
何を出すのかなとメニューに目をやると、Barbier qui fumeと書いてあった。フランスでよく目にする禁煙マークの「Non fumeur」から連想して燻製肉を売り物にしていることがすぐ分かった。「Charcuterie」という文字もあった。「シャルキュトリ」と発音し、「肉屋」とか「肉加工業」を意味する。肉の燻製が売り物のレストランだったのだ。
店内の冷蔵ショーケースには、ホームメイドと銘打ったハムやソーセージなど豚肉の燻製品がズラッと並んでいた。北ヨーロッパは、北海を挟んで、スカンジナビア地方、大陸側のフランドル地方とも燻製料理が発達している。漁業が盛んな前者は魚、畜産や養豚もある後者は肉も燻製にして保存。
バルビエールでは豚の燻製肉のサンドウィッチに人気があった。本場の燻製肉は東京でも滅多にお目にかかれない。親の敵とばかりに食べまくった。わずか1泊2日の滞在だったが、着いた日の夕食、その翌日の昼食と夕食、都合3回も通ってしまった。3回目は、さすがに相手も驚いていたが、すっかり顔なじみになったマネージャーが、「試食したいものがあれば切ってやるぞ」と言ってくれた。ほぼ全品を試食したが、ビールにも日本酒にもワインにも、相性がよい料理だと思った。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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