記事閲覧
ゲノム編集技術は3タイプ
意見交換会では、前半、専門家と3つの省庁から、ゲノム編集技術を利用して得られた食品等の扱いの説明があった。
農研機構の田部井豊氏は、3省庁の報告を理解するための前段の知識として、ゲノム編集技術の解説をした。
元来、品種改良とは、品質や耐病性、害虫抵抗性、機能成分、環境ストレス耐性などの育種目標を設定し、作物に人為的に新たな性質を加えて改良すること。その作物のなかに育種目的に合った遺伝資源がない場合、新たに作り出す必要がある。その方法が変異を創出することで、交雑や突然変異、灰培養、細胞融合、遺伝子組換え、ゲノム編集技術がその技術に当たる。従来法では、非常に長い年数がかかっていたことを伝えた。DNAは切断すると、まれに修復ミスが起こり、突然変異を起こすことがある。
ゲノム編集技術は、この突然変異の確率を上げる技術である。ゲノム編集技術は、DNAを部位特異的に切断するヌクレアーゼSDN(Site-Directed Nuclease)の種類によって、3つのタイプに分けられる。ここでは、今後、農業者の窓口となる農水省の言葉を使用する。
・SDN-1を使用:DNAのなかの標的の塩基配列を切断し、自然修復による変異を期待する。
・SDN-2を使用:DNAのなかの標的の塩基配列を切断し、短い塩基配列を挿入する。
・SDN-3を使用:DNAのなかの標的の塩基配列を切断し、別の生物種の遺伝子を挿入する。
SDN-2とSDN-3は、挿入した塩基配列や遺伝子をお手本に変異を起こす。育種においては、従来の育種法と同じように、育種過程で継代作業を繰り返すことによって、このときに挿入した外来遺伝子や、オフターゲットによるいわゆる失敗作は、選抜しないで排除することができる。
品種開発者はどうするのか
【カルタヘナ法に関する対応】
環境省は次のように通知している。
「3つのゲノム編集技術のうち、SDN-2とSDN-3はいずれも細胞外で加工した核酸であるDNA断片や遺伝子を導入する技術のためカルタヘナ法の規制対象になる。一方、DNAを切断するだけのSDN-1の技術は外部由来の核酸を導入する技術ではないことから規制の対象外とした」
農林水産省は意見交換会で、環境省の通知を受けた対応を説明した。
農林水産省では、ゲノム編集技術を利用して得た農水産物の開発者や輸入者などを想定した「使用者」に対し、「情報提供書」を提出し公開を求めることとしている。情報提供書とは、外部由来の核酸が残っていないカルタヘナ対象外の生物であるか、狙ったとおりの改良ができたのか、理論どおりか、意図しない変化(オフターゲット)がないかなどを考察しまとめた情報である。
会員の方はここからログイン
イベントレポート
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)