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新・農業経営者ルポ

100haの稲作を目指し、川中から川上へ

 100ha規模の稲作を行なうと宣言し、農業参入を果たした米穀店が山形県東根市にある。1897年創業の丸屋本店だ。5代目で代表取締役の鈴木亮吉が2015年に農業法人(株)稲2015(いなにまるいちご)を設立し、20ha弱で生産する。地元と香港で炊飯事業を展開しており、とくに香港での取扱量が伸びている。米穀店としての集荷率が年々下がっているのをなんとかしたいと生産事業に進出した。平均年齢40歳の従業員が農業ICTを駆使し、稲作の効率化を目指している。 文・写真/窪田新之助、山口亮子
「東根に100haを目指してコメの生産を始めてから数年になる米穀店がある。すでに結構な規模になっていて、投資もかなりしているそうだ」
筆者が丸屋本店について知ったのは、山形県内の米穀店からこんな話を聞いたからだった。それまでにも米穀店で生産を始めたところを何軒か訪れていた。進出の理由は、取引先の農家の離農に伴い、集荷率が悪化するのを食い止めるためというのが多い。ただ、丸屋本店はやむにやまれずの進出とは少し違うのではないか、より積極的、戦略的なものがあるのではないかと感じた。
取材を申し込んで鈴木亮吉に快諾してもらい、東根市を訪問することになった。ところが、取材の4日前、思わぬところで鈴木と出会うことになった。それは、中食・外食向けに米飯を提供する会社で作る公益社団法人日本炊飯協会が都内で開いた総会。事務局に挨拶した際、「こんな方もいるんですよ」と紹介されたのが鈴木だった。丸屋本店の4代目である鈴木の父が炊飯会社(株)ベストフーズを1991年に東根市で設立しており、鈴木はその代表取締役を務めているほか、日本炊飯協会の会員だったのだ。
炊飯事業もしているとは聞いていたが、協会の会員だとは想像しておらず、思わぬ出会いに驚いた。「こんなところでお会いするとは思いませんでした」と言って名刺交換をすると、「昨日まで香港で、これから東根に帰ります」と言われてさらに驚く。香港に五星白飯有限公司という炊飯会社を持っており、その董事長を務めており、そちらから東根に戻る途中で、協会の総会に参加したわけだ。

4年で20haに拡大

4日後、東根市の丸屋本店を訪ねた。敷地には事務所兼小売の店舗と、資材の積み上げられた倉庫があり、フォークリフトが走っている。普通の米穀店と違うのは、倉庫の脇にトラクターが2台止まっていることだろう。
「2015年12月に稲2015を設立し、16年に3haで生産をスタートしました。今年は20ha弱で、100haくらいまで大きくしたい。設備がそろわないと生産できないので、乾燥調製施設を建設しました」
そう言って鈴木の指差す先には巨大な黒い建物があった。完成して1カ月少々で、社名を示す表示はまだ設置していない。中には65石の乾燥機5台が並ぶ。50ha生産したとしても処理する能力がある。あと4台追加できるスペースがある。

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