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特集

思いをかなえる「合同会社」という選択

設立しやすい
農地を守り営農を次代に継承する
企業との提携の受け皿に
地域活性化の牽引役として

合同会社では出資者=社員=経営者。数ある法人形態のなかで、なぜ合同会社を選んだのか。おそらく一番の理由は「設立しやすさ」だろう。設立費用が安い、手続きも比較的簡単。有限会社が設立できなくなったあと、その代替として選ばれているという側面も強い。農業参入を図る企業が、農家と手を結ぶために設立したり。逆に農家側が一般企業に働きかけて協同事業化したり……。 しかし、設立当事者たちは、それだけにとどまらない活用法を思いついた――これは使える! 定款の自由度の高さ。定款が法人の″憲法=基本法”だとすれば、そこに自分たちの経営理念を込められる。意思決定や運営方法、利益配分の仕方などを独自に定めることも可能だ。利潤追求だけにとどまらず、出資比率とは無関係に、社員の思いや地域の思いを担保することもできる。
今回の特集では、そんな″思い”をかなえるために活動する農業関連の合同会社を紹介する。これから合同会社設立を考えている方々には「設立の手引き」も参考にしてほしい。

case 1 十勝とやま農場(北海道帯広市) 円滑な継承を求めて法人化コンパクトな形態が推進力を生む

【万が一のリスクに対して合同会社の形で備える】

十勝とやま農場の外山隆祥代表社員は4代目。初代がこの地に入植したのは1917年で、外山さんの就農は2009年。3代目の急逝後に経営者となった母から経営を引き継いだ。農地は祖父から生前贈与された。兄弟は会社員の弟が3人いる。4年前に結婚し、妻は勤めに出ている。昨年には長女が誕生した。体調は万全だったが外山さんはふと、「万が一、自分が倒れたりしたら今の農地はどうなってしまうのか」不安を覚えたという。
農地を所有している個人事業主の農家では、相続が発生すると農地が複数の相続人に分散されてしまったり、相続人に相続税の負担が発生したりする場合がある。
しかし、法人化して農地を法人が所有していれば、農地が分散相続されたり相続税が発生することもない。所有と経営の分離が可能な株式会社の場合は農地が第三者の手に渡る事態も想定されるが、出資者が経営者・社員になる合同会社であれば、身内間での円滑な農地相続=経営承継が可能だ。
外山さんが法人化を検討したもうひとつのきっかけは、金融機関の融資だった。
「設備投資のため自分が債務者となる融資を受けた際、当時50代の母が連帯保証人になりました。有事の発生確率は母のほうが高いのに、個人事業主は信用力が低い。会社が債務者で、個人は有限責任にするには法人化しかないと思いました。出資者を身内で固められる合同会社はコンパクトな法人形態で事業の推進力があります。合同会社の申請手続きは株式会社より平易ですが、面倒な部分もあるので農協や行政書士にサポートしてもらいました」
定款の事業内容は、基本的には個人事業主時代と大きくは変わらないが、あえて法人に移管しなかったものもあるという。太陽光発電は契約者の名義が変更されると契約がゼロからのスタートになってしまうため断念。農家民泊の事業も、消防法対応への絡みがあって1年程度の移行期間を設けることにした。
「まだ決算は迎えていませんが、義務付けられている社会保険の経費や、当社はしませんでしたが、新会社への変更に伴う諸々の負担、自動車保険の名義変更で保険料が高くなるなど、節税効果以上の出費がかさむこともあります」

【信用力を高めて成長の機会に備える】

同社は農協出荷以外に30年以上前から個人向けの産地直送(直販)に取り組み、隆祥さんの代になって豆類の業者向け販売に進出した。現在の売上構成は概算で農協出荷が50%、直販と交付金が25%ずつ。

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