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ラウンドアップ裁判の深層分析

農薬メーカー側を支持する全米の生産者団体と農業州の共和党議員


司法長官からの支援を受け、原告の全米小麦生産者協会は次のような声明を発表していた。
「カリフォルニア州の違憲行為に対し、全米の州司法長官が農業者と消費者のために立ち上がったことを喜ばしく思う。カリフォルニア州の欠陥制度プロポジション65は農業経済に取り返しのつかない損害を引き起こし、米国の生産者と消費者双方に悪影響を与えます。この欠陥行為をただちに停止するために努力しているのは、司法長官だけではありません。米国商工会議所やカリフォルニア商工会議所からも同様の意見陳述書が提出されており、我々の連帯は大きくなっています」
とはいえ、この裁判ですべてが解決したわけではない。あくまで、発がん性物質であるとの警告表示の要求を仮差し止めしたに過ぎない。判決後も、グリホサートはカリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)の発がん性物質リストに残ったままだ。

米国環境保護庁が8月8日、カリフォルニア州のグリホサートに対する規制を無効とする措置を発令

ところが、本記事の執筆現在、事態が急展開するニュースが入ってきた。
米国環境保護庁(EPA)は8月8日、カリフォルニア州のグリホサートに対する規制を無効にする措置を発表した。「EPAは消費者に正確なリスク情報を提供し、製品の偽ラベル表示を停止するために行動を起こす」と題する異例のプレスリリースを通じてだ。
その内容は、カリフォルニア州のグリホサートに関する発がん性物質認定を「誤り」とし、「商品に発がん性について表示すること自体を禁止する行政指導」だ。この法的根拠は、カリフォルニア州のラベル要求はFIFRA(米国連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法)が規定する「誤表示」に該当するとの判断である。
アンドリュー・ウィーラーEPA長官は今回の措置を行なった背景についてこう述べる。
「EPAとして、グリホサートに発がんリスクがないことを知っているにも関わらず、(カリフォルニア州が)不正確なラベル表示を要求することは無責任である。我々はカリフォルニア州の欠陥制度が連邦政府の方針を左右するようなことは認められない」
EPAは今回、連邦政府の面子にかけて、カリフォルニア州に好き勝手させまいと本気のようだ。
全米の生産者団体と農薬・資材業界が連帯し、カリフォルニア州に仮差し止めを勝ち取った結果として、農薬規制の本丸EPAの介入を促したとも言える。
これまで農薬メーカーが劣勢だと思われてきたラウンドアップ裁判だが、潮目が変わるきっかけになるかもしれない動きである。

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