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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

事業拡大と経営者の自己実現(2)


でも、冷静に考えれば、どんなにあがいても私には手が2本しかないし、一日24時間しかない。思い描いている事業拡大の形があるのなら、それを実現するためには、自分以外の力をどうにかして借りなければどうにもならない。仕組みができるまでは農場主である私が頑張るけれど、その先は従業員なりパートさんなり、単発で作業を外注する相手に任せる。経営のビジョンを共有してくれて、働きやすい職場だと感じて、農場から生まれる産品を好きになってもらうのが一番である。
わかりやすい部分では、作業の合間とか休憩時間に「どう思う?」と、作業をメインで携わっているスタッフに意見を賜るようにしている。それは、私とは違う感度で見ている可能性が高いからである。相手の考えを曲げてまで私の考えを押し通す気は更々ないし、対話によって考えのシェアができるから、人為的な想定外のトラブルを防いでいる部分もあるだろう。
農業に限らず、仕事は単純な作業の繰り返しに見えるけれど、そうではない。夏の時期になると、パートさんがアスパラハウスの草とりにムキになっていることがある。「今日はこの範囲の草を叩いておきたい」と限られた時間で、休憩を挟みながら根気よくやってくれるのは、いまより草が大きくなったら大変になると予測できるからだと思う。そういう場面に出くわすと、経営者にとっては結果を追いかけるのが仕事だけれど、作業している人もある程度は作業の結果を追いかけられたら、作業ごとに目標を持てるだろうし、作業のコツをつかみやすくなるだろうと思う。
幸い、私の農場で働いている人は、みんなアスパラが大好きだ。太くて甘くて柔らかい3Lサイズのアスパラを山盛りに出荷したいという思いを共有できているように感じられる。その目標を達成するために、作業の時間が短くても、仕事の質を上げて、出来栄えを追求してくれるから、手取り足取り教えるより、短時間で作業がこなせる秘訣なのではないかと、彼らから教えられるくらいである。

機械力と作業の変更で同じ労働時間でこなしたい

農場主の仕事は、農場が抱える大小の課題を整理して、必要なところに投資をして、解決していくことの積み重ねなのだとつくづく実感する。いま直面している課題のほかに、中長期的な課題も見据えておく必要があるけれど、まずは当面の課題を乗り越えないと先に進めない。その塩梅をとって、予算建てをして投資計画を進めるのである。

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