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新・農業経営者ルポ

農家こそ、生産メーカーになるべきだ

日本の農業の問題のひとつは、生産現場と消費者との接点がないことだと言われる。その典型的な例が、農産物には本当の意味での生産メーカーが存在していないことだと、(株)アースワークの松浦助一は指摘する。コメの本来の生産者であるはずの農家が、加工メーカーへの原料販売業者の立場に甘んじて、自分たちが本当に売りたいと思う商品を消費者に売ることができない。そんな状況に風穴を開けて、売りたいものを、自分で売るためのシステムをつくりあげた松浦の仕事ぶりを見つめる。
「日本の農業の世界には不思議なことがたくさんあるんですが、そのひとつが農産物に生産メーカーがいないことなんです」アースワークの代表取締役を務める松浦助一は、大きな目をぎょろりとさせて言った。「例えば、車でも電化製品でも、どんな商品にも、必ず生産メーカーというのがありますよね。でも、農産物の場合、生産メーカーの役割を担っているのは都市部の問屋です。そこで農家から集めたコメに、○○印の○○米みたいな名前をつけて売る。でも、そのコメの生い立ちをきちんと知っているわけではない」 コメの流通・販売をめぐるシステムへの疑問から松浦が立ち上げたのが、無農薬栽培のコメを中心に、その生産から販売までを手がける会社「アースワーク」である。アースワークでは、コメのほかに、無農薬米を使った餅や日本酒、地元の福井県大野市産の里芋なども手がけ、その売り上げ総額は3億に達している。

 自宅の隣につくられた事務所を訪ねたとき、松浦は営業の仕事でかけまわっていて不在だった。事務所はOA機器や書類であふれ、スタッフが端末のキーを打つ音や、ファックスが紙をはき出す音が響いていた。目をつぶると、都会のオフィスと錯覚しそうだった。しかし、少し遅れて事務所に戻ってきた松浦の風貌は、億単位のビジネスを動かす経営者というより、土臭く、豪胆な迫力に満ちていた。腕は丸太のように太く、笑い方も豪快だ。アースワーク(大地の仕事)という言葉がぴったりくる感じの人物だった。

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