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新・農業経営者ルポ

農家こそ、生産メーカーになるべきだ

 量販店とのパイプが強まるにつれて、以前からの取引先である米問屋との間に軋轢が生じてきた。結局、松浦は2003年に、それまで年間5000俵近い売り上げがあった関西の問屋との取引を止める。

 現在、アースワークのコメを扱っている量販店の店舗数は90店舗に上る。売り上げとしては量販店が50%、家庭への直販が約25%、そのほかが生協など通販業者や酒屋となっている。加工メーカーへの原料販売業者ではなく、アースワークのコメを提供するメーカーとして自立するという松浦の願いは10年かけて、ひとつの達成を見た。

 松浦の経営方法の特徴は、データに基づいた徹底したマーケティングである。現在、松浦が生産している商品は、生産品質のランク順に挙げると、JAS有機無農薬米、無殺菌酵素栽培米、夢ごこち、減農薬減化学栽培コシヒカリ、一般栽培コシヒカリの5種類である。アースワークでは、それぞれの出荷先での売り上げを集計し、どのコメが、どの販売先で、どのくらいの販売量があるのかを分析している。

「量販店での売れ筋の価格帯は何か、その価格帯にあたる商品は何か、生協ではどうか、通販ではどうか。そうしたデータを把握することによって、どの商品をどのくらいの規模で生産すればいいかが、おのずと明らかになってきます。それを栽培面積に落としていくと、だいたい400haあればカバーできるという計算になるんです。現在は委託分もすべて含めて170haなので、まだ先は長いのですが、何をすればいいか、その枠組みがはっきりしたので、あとはやるだけです」
だれのためのトレーサビリティか?

 アースワークのコメをアピールする上で、松浦がもっとも重視しているのが、資材の統一と農薬の使用を極力減らすことである。

 その栽培方法もランクに応じて変えている。最高ランクのJAS有機無農薬米では苗と苗の間隔を通常の2倍とる、中耕作業を行う、酵素散布を何度も行うといった、きめ細かな栽培方法がとられている。水田の委託栽培分についても、除草薬の使用は1回だけ、予防剤は使用しないなど、コメの種類によって細かいガイダンスが行われている。

 また、とくに気を遣っているのがトレーサビリティだ。

「うちではスタッフには、タイムカードの代わりに詳細な作業日誌をつけることを義務づけています。コンピュータのシステムをつくり、そこに作業内容、使用した機材や資材、作業した圃場の番号などを細かく打ち込んでマスター化できるようにしました。問題があったときは、いつ、誰が何を使って、何をしたかが、簡単にトレースできる。ただ、委託分については、そこまでできないので、それが今後の課題です」

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