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人生・農業リセット再出発

ことの葉の魔力

玩具売り場で幼児が「これ買って~!」と床を転げ泣き叫ぶ。母親が「ケンちゃん、UFOよ!」と言うと、子供はパッと起き上がって外に駈け出した。重苦しい空気の労使交渉で「イエスかノーか、どっちだ!」と労組が怒鳴る。社長が「君いい声してるね、実によく通るよ」と言うと会場はシーンと静まり返った。「流れ星戦法」である。
国際線で搭乗御礼の挨拶をする私に、田中角栄総理大臣は「久しぶりだねえ、ところで名前はなんだったけ」、「はい、黒木ですが」、「いやそれは知っているよ! 下の名前だよ」。かくして彼はすぐに各人のフルネームを覚える。時の最高権力者である総理が、強気のまま獄中に入ったものの突如として陥落したのは、自分の名前ではなく無機的な「囚人番号?」で呼ばれた瞬間だった。彼は、各省庁の大臣に就任するたびに、自宅で遅くまでファイルを見ながら猛勉強を続けた。翌日、廊下ですれ違う官僚に、「おう宮澤君、今日は奥さんの誕生日だね、早く帰ってあげなさいよ」と声をかけ、まさに一瞬にして誰をも味方につける人心掌握の天才だったとは、長男の田中京さんと飲みながら聞いた逸話だ。
ナポレオンの睡眠時間が短かったのは有名だ。ヨーロッパ大陸の国々を攻略して遥か遠方のモスクワまで軍隊を率いて遠征するには、昨日まで敵だった地元民を屈服させて味方につけないと数万人兵隊の食料確保や背後の安全確保も含めて前進は不可能。「モーリス伍長、今の大砲の狙いは素晴らしいぞ」、「フィリップ軍曹、その調子で突撃」と呼ばれた彼らは感動した。昨日まで敵の大将だった人間が、たかが一兵卒である自分たち一人ひとりの名前を呼んで鼓舞し続けたからだ。士は己を知る者のために死す。ナポレオンはカードに一人ずつの似顔絵や特徴を描き、その裏には名前を書いた。それをテントの中で覚えることに睡眠を削って時間を割いた。

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