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特集

“スマート農業ブーム”への違和感(前編)~最新技術は個々の経営に変革をもたらしているか~

近年、農業界を取り巻く人たちの関心を集めている「スマート農業」。市場調査、コンサルティング会社が競うように公表した市場予測では、いずれも数年後にかけて急成長が見込まれている。ブームに乗り遅れるな!とばかりに、関連業界のコマーシャリズムは過熱し、農業経営者の投資意欲を駆り立てているが、農業現場からはこのブームに違和感を感じるという声も聞こえてくる。かつて、トラクターやコンバイン、土耕機などの農業機械が農作業を大きく変えたのは、機械を導入して稼働率を上げれば、利益を確保できたからだ。しかし、スマート農業技術にそれと同じ感覚で投資するのは危ない。稼働率を上げればますますコストがかかり、その費用は回収できない。経営規模が拡大しリスク管理が求められるなか、いくら先端技術を導入しても、経営革新を伴わなければ「スマート農業」にはならないのだ。 (構成・まとめ/加藤祐子)

1 スマート農業の概要と関連技術の普及状況

【国家レベルで推進するスマート農業】

2013年11月に農林水産省は「スマート農業の実現に向けた研究会」を立ち上げた。参加メンバーは経済産業省、総務省、内閣府、内閣官房等の複数の省庁と、関連する民間企業、農業者、学者から構成され、17年3月までに6回の審議を重ねて推進方策を練った。審議は、「超省力・大規模生産を実現し、作物の能力を最大限に発揮し、きつい作業、危険な作業からの解放と誰もが取り組みやすい農業を実現し、消費者・実需者に安心と信頼を提供する」という将来像をとりまとめるところからスタートし、「ロボット・AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)等の先端技術を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を実現する新たな農業」と位置付けた(図1)。これまでの「精密農業」の行政施策は、精密農業関連技術に加えて、栽培支援、販売支援、経営支援する商品やサービス、ドローンやロボット等の展開により、新たに「スマート農業」として社会実装の段階に入ったのだ。
農水省が18年度の第2次補正予算で42億円、19年度予算で5億円余りを投じて推進しているのが、スマート農業実証プロジェクトだ。19年9月時点で、実証圃場は北海道から沖縄まで69件に及ぶ(図2)。農業経営の将来像を営農類型別に示し、6つに分類された37項目の新技術のロードマップでは25年までの実証・市販化・普及を目指している。農業者の取り組み段階を「知る」、「試す」、「導入する」の3段階に分けて環境整備を行なっていくという。

【スマート農業の市場規模】

17年現在、スマート農業の市場規模は123億円とも129億円ともいわれている。対象分野の設定によってその数字は異なるが、新製品が次々に発表され、10年前には限られた農業者しか関心を示さなかった技術が、多くの農業現場に導入される段階に到達している。
なかでも、スマート農業技術の先駆け的存在はGPSガイダンスだ。当初はLEDランプが進行方向とのズレを点灯する構造だったが、その後液晶画面が採用され、日本語表示とカラー液晶画面による“トラクター版のカーナビ”に進化した時点で、普及が加速した。技術はさらに進化し、ハンドル操作をも自動化する自動操舵装置が登場し、後を追うように導入が進む。作業幅の広い大型トラクターの作業だけでなく、いまでは乗用管理機や田植機など装着する側も多様化している。北海道農政部の調査(図3)によれば、08年から18年までの累計出荷台数は、GPSガイダンスが1万4640台、自動操舵装置が6700台、調査対象外のツールも含めると、利用者はその数を大幅に超える。

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