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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第9回 知的障害者によるワイン造り イノベーティブな経営者 (有)ココ・ファーム・ワイナリー(栃木県足利市)


「微生物が働く畑の土壌で、葡萄樹が光合成でブドウ糖を造り、そのブドウ糖を酵母や乳酸菌などの微生物がワインにします。微生物がワインを造っているのであって、人の手ではない」
ワインは酵母という微生物が作る生命活動の結果だということを発見したのはフランスのパスツールである。池上氏のワイン論は、醸造学専攻の成果であり、科学の知見である。

高価格だがフェアトレードではない
ココ(COCO)ワインは高い。そもそも日本ワインは価格が高い。輸入ワインのほうがコスパが良いのではないかというのが、筆者の率直な意見だ。COCOワインは、その日本ワインより3割くらい高いように思える。
当初、フェアトレード価格かと思った(注)。重度知的障害の園生たちが造ったワインなので、再生産価格を保証するつもりで主に保護者たちが高値で買っていると思った。
しかし、そうではなかった。出荷先は普通の市場である。そして、何よりも「美味しい」のである。この1年、日本ワインの研究を始めて以来、沢山の日本ワインを試飲してきたが、今まで飲んだなかでは一番美味しかった。もちろん、筆者の嗜好での比較である。
(注)フェアトレードFair trade
先進国の市場で、途上国で生産された商品(バナナなど)が安い価格で流通していることがある。一方、現地ではその安さを生み出すため、農薬が必要以上に使用され環境が破壊されたり、生産者の健康に害を及ぼしたりしている。そこで、生産者が良質の商品を作り続けていけるように、持続可能な取引を可能にするような適正な価格で継続的に購入することを「フェアトレード」という。

3 園生の仕事と自立のための仕組み

実際には、どんな仕事を園生は担っているのか。表1はブドウ栽培の作業分担である。ブドウの栽培工程は様々な仕事がある。それぞれが自分にあった仕事――草取りや、石拾いや、カラス追い、袋掛け、等々を、自然に囲まれて、のんびりと作業している。
園生が分担している工程を省くと、いいブドウはできない。袋掛けすることで良質のブドウが収穫できるが、今年は16万枚袋掛けした。園生たちの袋掛け作業で良質なブドウができる。単純な繰り返し作業を丁寧にやる人がいて、初めて他の畑よりも良いブドウが収穫できる。
効率的に仕事を処理することは考えない。写真2に示すように、園生たちがビンを運んでいる。そういう仕事ならできるわけである。単純で、繰り返す仕事である。先生の仕事は、園生の仕事を創りだすことであるから、自動化はしない。

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