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一度に人が集まりすぎるという失敗はしないけれど、声をかけたらその責任があるというところは外さない。来てほしいから声をかけるのだから、経営者として精一杯応えるのは当然である。「人を募集しているが来ない」という話をよく聞くが、一方的に労働条件を書いたチラシを配っても、人は集まらないと考えている。賃金を高めに設定すれば、その条件ならと来てくれるかもしれないが、農場の目標をシェアできない人が来ても無理が生じる。いまのところ、誰かと誰かが極端に仲がいいとか、相性が悪いという事がないのは、採用のスタンスが現状では上手くいっているということなのだろうと思う。
バラバラな労働時間にも出荷体制を変えて対応
出勤簿で見れば、我が経営には15人が関わっている。最初は朝7時に必ず来てほしいという条件も考えていたが、働いてくれる人にうちが合わせることにした。子供のいるお母さん方は9時出勤で、なかには午前上がりの人もいて、働く時間はバラバラ。人の出入りが多いので驚かれることもあるが、総労働時間で考えれば適当な範囲に収まっている。
具体的な数字を挙げたほうがわかりやすいので、現在の労働力を表1に整理してみた。家族の労働が5600時間、そのうちの2000時間ずつが私と妻で、父母が800時間ずつという内訳になる。よく社長には休みがあるとかないという言い方をするけれど、実質的に農作業に費やしているのは2000時間強とみなしている。家族に加えて年間雇用の正社員が一人で2000時間弱、パートさんが1500~2000時間弱だろうか。いずれも休日は土日に集中しているので、代わりに家族が苛酷に働くということにはならないように、経営を工夫している。
さらに、規模拡大に伴って増えた仕事の一部は、大型農機を操作できる人に外注している。ある程度の専門スキルが必要な作業で、年間雇用する量には満たないが、前述の労働力ではこなせない。年間にして600時間程度、2名の助っ人の力を借りている。作業適期にスキルの高い人材を頼めるという環境は、一朝一夕では整わない。農閑期の冬季には手伝いに出かけるなど、お互い様の精神で、時間をかけて良好な関係づくりに労を惜しまないことである。
当然、バラバラな労働時間に合わせてシフトを組んでも、理想どおりには回らない。出荷体制を見直したり、出荷時間を調整したり、人員調整に奔走したものの、装備の充実のほうが大きな変化をもたらした。導入したのは、アスパラガスの鮮度を保持できるダブルドア仕様の大型冷蔵庫である。夕方の集荷に間に合わない分は冷蔵庫に入れて翌日の出荷に回せるようになり、全盛期を除いて土日のアスパラガスの出荷をやめた。冷蔵庫内には棚を設けて、収穫後の選別時に、一般出荷用とギフト用に分けて管理している。出荷作業がないときに、牛舎の清掃から牛の衛生管理、餌のポジショニングなど和牛部門のルーチン作業を済ませておけば、土日の仕事は最低限になる。朝、家族の誰かが牛舎をしつつ、いまは昼間に一回りアスパラを2人で3時間収穫する程度で済んでいる。
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齊藤義崇 サイトウヨシタカ
1973年北海道生まれ。栗山町在住。昨年、普及指導員を退職し、実家の農業を2014年から営む。経営は和牛繁殖、施設園芸が主体。普及指導員時代は、主に水稲と農業経営を担当し、農業経営の支援に尽力した。主に農業法人の設立、経営試算ソフト「Hokkaido_Naviシステム」の開発、乾田直播の推進、水田輪作体系の確立などに携わる。
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