ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

スイス 独自の「THC濃度1%未満」の基準で急進するヘンプ100%のタバコ

薬草文化と魔女狩り

欧州の中央内陸部に位置するスイスの人口は842万人。国土面積は日本の九州とほぼ同じだが、その約4割が海抜1300mを越え、農耕地の7割を牧草地が占める。
ヘンプの歴史を辿れば、古くは紀元前6500年前から紀元前200年にかけて、アルプスの低地でヘンプの花粉が発見されたという記録が残されている。時を経た15世紀、欧州全域でヘンプ産業が栄えた時代には同国でも栽培・加工が盛んに行なわれたという。繊維利用のほかに薬草としての価値もこの時期に見出された。1539年にドイツの植物学者で医師のヒエロニムス・ボックは約700種の植物の名称と特徴、薬効を分類した『Krauterbuch(西洋ハーブ書)』を著した。スイスは隣接するドイツと経済および文化圏が近く、このハーブ書ブームの影響を受けた。アルプスの高山植物は薬草の宝庫で、大麻草もここに掲載され、薬草としての効能が明記されている(図1)。
一方で、薬草文化が普及した時期のスイスといえば、宗教改革の真っ只中。中世の魔女狩りにお墨付きを与えたローマ教皇インノケンティウス8世は、魔法と魔術に対する厳しい処罰を要求した「魔女教書」を公布した。魔女狩りハンドブックとして悪名高い『魔女に与える鉄槌』(1487年)は、魔女教書を序文にしたことで権威を持ったとされる。もともとローマ・カトリック教会は向精神作用のあるハーブやタバコなどを悪習としていた。スイス国内でも南部のフランス地域では影響が特に強く、1515年に500人が処刑されたという記録がある。魔法や魔術に大麻草も含まれていたため、それをハーブとして扱っていた薬草師や助産師がどの程度の人数で迫害を受けたかは全く不明だが、この時代には大麻草は薬草文化と魔女狩りという対照的な扱いを受ける対象だったのだ。

関連記事

powered by weblio