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知っておきたい 世界各国の産業用ヘンプ

スイス 独自の「THC濃度1%未満」の基準で急進するヘンプ100%のタバコ


ハイマット社は、世界で初めてヘンプ100%の“タバコ”を商品化したスイスのベンチャー企業だ。1箱20本入りの販売価格は49.9フラン(約5800円)、ヘンプ由来のCBDを4g含む(図2)。タバコの葉を一切使っていないものの、タバコと同じ形態をしているので、販売対象は18歳以上に限られ、タバコ税25%と付加価値税8%が課せられる国内限定販売品である。
登場した翌17年に、いきなり5000万フラン(約57億円)の売上を記録し、税収も1300万フラン(約15億円)となった。供給側も、16年にたった5人だったヘンプの栽培者が、18年には630人に拡大。CBD製品は、CBDタバコ以外にも電子タバコ、チンキ剤、クリーム、お菓子など多種多様に展開され、THC濃度1%未満という緩い基準を活かした市場が一気に形成された。多くは施設内で雌株を受粉させずに栽培され、1当たり500gの花穂を収穫し、それらは1kg当たり約19万円で取引されている(図3)。
しかし、CBD商品の国内での需要は飽和しており、次なる課題はイタリアやフランスなどの欧州圏内への輸出である。懸案事項は、19年2月にEUが大麻草から抽出したCBDオイルを97年5月15日以前に食用しての使用歴がない「新規食品扱い」とすると発表したことだ。CBD製品の多くが新たに申請して承認を受けないと販売できなくなった。このEUの決定に対して、業界団体であるヨーロッパ産業用ヘンプ協会(EIHA)は、97年以前に20カ国で歴史的に大麻抽出物が流通していた実例をあげて反論している。
さらに、問題が複雑化しているのは、CBDが難治性てんかん薬などの医薬品原料にもなっているためである。そこで、EIHAは医薬品、栄養補助品、食品の区分ごとにCBDの摂取量の新基準をEUに提案している(表1)。CBDタバコを皮切りに、CBD製品をスイス国内からEU経済圏、さらには世界へ市場を拡大できるか。多民族国家らしい柔軟な文化で生まれた市場を世界にどう展開していくのか。直面する課題をどう克服するのか注目である。

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