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新・農業経営者ルポ

本物を追求する称号なき生ハムマイスター


「ハムをつくってほしいという希望でも、肉を見て、一部はリエット(パテに似たフランスの肉料理)にしようといった提案をする。これは経験を積むしかない」

加工肉の美味しさ、遊休地再生、低コスト経営の理に適った放牧

放牧場に行くと、10aほどの1区画に10頭ほどの豚が放牧されている。興味深げに人に寄っては逃げ、寄っては逃げる。まるで「だるまさんが転んだ」を楽しんでいるかのようだ。
「ここで豚を見てると飽きない」
きたやつハムは、地域の養豚農家から年間およそ1000頭を仕入れている。自社が手掛ける放牧豚は、常
時約30頭。年間約100頭を原料にしている。放牧を始めたのは、もっと
も理に適った方法だったからである。
理由のひとつは、美味しい生ハムとサラミをつくるのに適しているからである。よく走り回るので、生ハムに使うもも肉が締まる。
「放牧は、生ハムやサラミに特化した肉をつくるため。ハムやサラミは乾燥させるので、水分が少ないほうがいい。一般的には生後2カ月の仔豚を肥育して生後6カ月で肉にするが、ここではそれより3カ月長い生後9カ月まで肥育している。大人になると肉の水分が減り凝縮した肉になる」
生後9カ月というのは、スペインやイタリアの例を踏まえて決めた。スペインのイベリコ豚の最高級品ベジョータの放牧期間が約1年。イタリアでは生後9カ月。放牧1年は、生ハムやサラミ用には長すぎる。イタリアの生後9カ月なら水分もちょうどよい。日本の市場では一般的に生後6カ月、約115kgの豚が出荷されている。生後9カ月まで肥育すると3カ月分の餌代がかかるが、体重は160kgを超え、枝肉で100kg以上になる。1頭からさまざまな生ハムやサラミをつくり、他の部位は精肉のスライスや他の加工肉の原料にして使い切る。
放牧を始めたもうひとつの理由は、地域の遊休地や耕作放棄地を活かすためだ。草木が生い茂ってしまった土地に仔豚を放すと、2週間ほどで草木の根まで掘り起こし、2カ月も経てばふん尿で肥沃な土地に戻してくれる。農地は地権者から10a当たり1万円で借り入れ、放牧後、また畑として使いたいという人には返す。こうして再び野菜が植えられるようになった畑もある。病気を防ぐためにも、点在する遊休地を借りるほうが合理的だと言う。
「家畜保健衛生所に、同じところで飼い続けると寄生虫が発生し内臓が食べられなくなると聞いた。放牧場を1カ所にせず、3年以上同じところで飼わないように移動させている。内臓も食べたいですからね」

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