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オランダが抱える食の二極化と環境保護への行き過ぎた規制と社会からのプレッシャーは今後、農業分野にどのような影響を与えるのだろうか。
Part2 オランダ国内の労働力不足の現状と施設園芸会社が目指す未来
【Ridder社、World Horti Center訪問】
Ridderグループはマース川に近い南ホラント州ウェストラントに本社がある。当地は施設園芸関連の企業とグラスハウスが建ち並ぶ集積地帯として知られる。
同社は約60年前、施設園芸の天窓を開閉するためのモーターの開発から始まった同族経営企業だ。広報担当者のBoyde Nils氏は、「オランダでは90%以上のグラスハウスで我が社のモーターが使われているよ。世界を見ても80~90%がそうだろう」と話す。
現在、内張りスクリーンや環境制御システム、灌漑システム、労務管理システムなど、施設内部を統括するシステムを開発・製造し、世界中に現地子会社や代理店を通じて販売している。売り上げの4分の3が輸出であり、国外の主要な市場はメキシコやカナダ、中国になる。最近では、ウズベキスタンやカザフスタン、ロシアからの発注も多いそうだ。
【農家戸数の減少と労働力不足に直面】
日本と同様、オランダでも、農家戸数が減少し、1戸当たりの経営面積は拡大している。別表にCentraal Bureau voorde Statistiek (オランダ中央統計局)のデータを示す。それによると、施設園芸のうち花きの農家戸数は2000年から2018年にかけ、4分の1にまで減少している。その分、規模拡大が進んだものの、総面積をカバーするには至っていない。施設園芸も同じような傾向ながら、規模拡大はさほどでもない。
「オランダ国内にはもうグラスハウスを建てるスペースがあまりないね。新しくグラスハウスを建てるのは、後継者や新規就農者が事業継承をした際、近隣の古くて低いグラスハウスを何軒か買い取って集約し、大規模で高さがあるものに建て直すときくらいかな」(前出のBoy氏)
施設内で労働するワーカーの不足もオランダ国内をはじめ、世界中で大きな問題になっている。とくに施設園芸の資材会社がスペインや東欧などEU内の他国へ資材やシステム、ノウハウを販売していることで、いままでオランダに出稼ぎに来ていたワーカーも近隣諸国に流れ、なかなか集まらなくなってきた。現行のトマト栽培のシステムでは、1ha当たり5人のワーカーが必要だといわれている。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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