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同氏の祖父はこの地で就農した。祖父はオランダの馬鈴薯育種会社であるAgrico社の創設者の一人で、ドレンテ州の種イモ協会の議長でもあったという。1970年代には農機など農業技術に明るい父が後を継ぎ、その後同氏は学校卒業後の1996年に就農した。現在は同氏、父、義父の3人で営農しており、雇用はしていない。必要に応じて地域の若者やトレイニーに依頼してアルバイトに来てもらっている。
同氏の今年の作付面積は、種イモが37 ha、でん粉用馬鈴薯が21 ha、てん菜が24 ha、麦芽用大麦が24 haだった。その他、自然保護区を7ha設けている。
【貯蔵庫のエネルギーを自家発電でまかない、貯蔵管理が利益を増やす】
納屋や貯蔵庫を見せてもらうと、至るところに農機が見えた。年間どれだけ投資しているのかを尋ねると、「今年は電動フォークリフトと、トラクター、ポテトディガーかな。電動フォークリフトが高かったなあ」という答えが返ってきた。ポテトディガーに関しては2年ごとに買い換えているそうだ。さらに、太陽光発電にも投資しており、農業をより良く楽にするためだとその理由を述べた。
2012年に216枚の太陽光パネルを設置した。その数を徐々に増やし、現在では1075枚で、年間24万kWの発電量が得られている。これは、農場や自宅で使用する3倍のエネルギーに相当する。さらに、2015年には、エネルギーコストを抑えるため、馬鈴薯用貯蔵庫に必要な1日に8時間程度使用するエネルギーのうち、価格が高いときに自家発電に切り替えるため、エネルギーの貯蔵設備を導入した。
ちなみに、でん粉用馬鈴薯に約1000t、種イモ用に約1500t収容可能な貯蔵庫を保有する。エネルギーの貯蔵設備の価格は25万ユーロで、うち10万ユーロは補助金を活用した。なんでも貯蔵して販売価格が高い時期に出荷することが利益を出す秘訣だそうだ。貯蔵する作物は戦略的に決めており、馬鈴薯は貯蔵し、それ以外の利益が出にくいてん菜や大麦は収穫後すぐにディーラーを通じて売り切ってしまう。
エネルギーは、自家用には十分意味をなしているが、販売となるとなかなか難しいようだ。
「エネルギー市場に販売しているけど、価格の変動が15分ごとに起こり、40セントで売れたかと思うと、すぐにマイナス20セントになるなんてこともある。太陽光パネル間の接続がうまくいかず、突然貯蔵庫の電源が切れていたり、ソフトウェア会社が倒産してシステムを買い直したり、本当にいろいろ起こるよ。エネルギーの貯蔵は“未来”のために良いと言われているけど、未来ではなくもう少し早く利益が出ると思っているんだけどね」
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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