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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第10回 ワイン技術移転センターの役割 ブルース氏の空知地域振興 合同会社10Rワイナリー(北海道岩見沢市)

北海道空知は新しいワイナリー集積地になってきた。米国人ブルース氏の10Rワイナリー(委託醸造)が技術移転センターの役割を果たし、ワイン醸造家を育てている。気候変動と技術進歩を積極的に生かす方策をとれば、地域振興に曙光が見えてくるであろう。

1 「炭・鉄・港」かワインツーリズムか――人口7割減の旧産炭地・空知振興策

北海道に陽が差してきた。気候変動に伴い農業の産地移動が起きており、コメや野菜の主産地が北海道に移ってきている。また、ブドウ栽培・ワイナリー産業など新しい産業が立地し、観光を誘発し、北海道の可能性を広げている。
1960年代のエネルギー革命以前、北海道は石炭産業で栄えていた。しかし、石炭から石油・天然ガスへの流体革命の進行とともに、炭鉱閉山が続き、産炭地は急速に衰退した。空知地域の人口は60年の82万人から、今や30万人を切っている。南北中空知のそれぞれの拠点都市である岩見沢、滝川、深川を除くと、64万人から16万人へと75%も減少した(国勢調査)。特に、夕張、三笠、歌志内、上砂川の人口減は激しく、9割減である。10分の1に激減した。いずれも、炭鉱地帯である。
この人口減の下げ止まりは、まだ見えないという(北海道空知総合振興局)。北海道庁は空知振興の新しいビジョンを作った。「炭(タン)・鉄(テツ)・港(コウ)」だ。開拓使時代から現代までの北海道の歴史は、空知(石炭)、室蘭(鉄鋼)、小樽(港湾)とそれらをつなぐ鉄道が近代化を支えた。この近代北海道の原点を再発見するところから(炭鉄港は今年5月、「日本遺産」に認定された)、地域振興につなげたいという。
この北海道近代化のストーリーを売り出すことで、観光につなげたり産業遺産ファンや鉄道ファンからの「ふるさと納税」を期待している。もちろん、この地域に住んでいることに、人々が誇りを持つ効果もあろう。
しかし、炭鉄港ストーリーに自ら悦に入っている節がある。ふるさと納税に期待しているところなど他力本願で、なんとなく弱さを感じる。もっと積極的な手はないものか。

新・一村一品で競争せよ
北海道・空知は農業地域である。地球温暖化、品種改良など技術進歩の効果から、空知農業は競争力を高めている。「ゆめぴりか」や「ななつぼし」など、コメどころとしての評価は高い。夕張メロンなど有名ブランド作物もある。近年では、ワイナリーとブドウ畑が集中する地域としても知られ、生産地を訪ねるワインツーリズムが人気になっている。
しかし、同じ道内にあって、十勝より遅れている側面もある。十勝のほうが、農産物のブランド力が高い。チーズや長芋など全国でもトップクラスのブランドがある。十勝のブランド力に匹敵するのは、空知はまだコメだけと言っても過言ではない。
気候変動の影響から、北海道・空知農業は有利になってきている。ワインのメッカ・山梨県勝沼が気候変動に伴い、温暖化に強い品種を世界中に探し始めているが、北海道は“クールクライメイト”の条件が生きて、いいワイン造りができている。農業産地は“北上”している。コメも然りだ。
チャンス到来である。この条件変化を活かした新しい発展戦略を立ててはどうか。具体的に言うと、例えば、「新・一村一品運動」はどうか。

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