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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

会計学・経営観を学ぶ視察の掟

視察で知りたいのは生産技術だけではない

皆さんも年に数回は、所属する団体あるいは個人で農場視察に出かける機会をお持ちだろうと思う。観光も兼ねた親睦を目的とした視察旅行もあるが、明確な目標を持って出かけた視察で得た情報は、その後の経営に変革をもたらすことも少なくない。なかでも海外や国内でも遠方であれば、気軽に再訪できないだけに、その影響を強く受けることもある。
では、皆さん視察先でどんな情報に注目されるだろうか? 同じ品目を扱う農場を訪ねれば、真っ先に気になるのは機械装備や設備、品種、栽培体系など技術的なところだと即答される方もおられよう。確かに実現したい作業体系を思い描いていれば、作業機の使い心地やどのタイミングで使っているのか、どこで手に入れたのかなど、メーカーに尋ねるよりも有用な情報が得られることもある。長らく地域の慣習的に作業してきたことでも、ほかの地域ではもっと合理的に行なわれていることもあり得る。そうした情報は自ら取りに行くという姿勢の人が技術を先取りできるというのは、どの分野でも共通する部分だろう。
さらに、私はトラクターや作業機など、倉庫を眺めるだけで満足してはもったいないと思う側の人間である。それだけでも話は尽きないのだが、限られた時間で聞きたいのは生産技術の話だけではないからだ。技術体系なり、販路の展開なり、ユニークな取り組みを行なっている経営者から、教科書とのギャップが大きい会計学や経営観を聞き出すことができれば、その視察が有意義なものになるのは間違いない。でも、お手本となる経営者から本音や財務状況などを聞き出すのは簡単なことではない。そこで、今回はその掟に触れたく、農場視察に焦点を当てることにした。

経営者の考え方次第でそのかたちは十人十色

農業界には上場企業が極めて少なく、法人経営でも中小企業が圧倒的多数を占める。個人であれ法人であれ、農業簿記や会社会計のルールを学んでも、実践はお手本などないも同然である。たとえば、貸借対照表を見れば、自己資本と負債の割合、農地の所有状況、機械・設備等の所有状況がわかり、損益計算書を見れば、費用と収益、減価償却費等による節税対策までうかがい知ることができよう。だが、残念なことによその経営の帳簿を覗き見るわけにはいかないのだ。

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