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立ち入り検査の結果、もちろんクロと出た。警告処分だ。その公表は、官邸の指示で、JA全農山形による同年産概算金を公表する前日(9月11日)にセットした。その時の官邸のドヤ顔が思い浮かぶ。
2回目の自爆的価格テロは不発に終わった。12月14日の投開票は、自民党勝利に終わったからだ。公示前より2議席失ったが291議席の安定多数を獲得。ただ当時の西川公也農水相が、現職閣僚で唯一、小選挙区で落選(比例復活)というハプニングはあった
こうなると官邸は押せ押せムード。選挙が終わって4日後の18日、農水省に「米の安定取引研究会」を設置させた。全農が政権攻撃の道具に使っていた概算金制度に風穴を開けるためだ。研究会発足からたった3カ月間という短期間で、「透明化が重要」と結論をまとめ、全農攻撃の弾込めをした。
2回目の自爆的価格テロは失敗への追い打ちだ。これで全農はすっかり戦闘意欲をなくしてしまったようだ。官邸の強い指示で概算金制度の見直しに踏み切らされた。15年産米からスタートしたJA概算金と生産者概算金のことである。当時のエピソードをメモに書き残していた。
「全農は概算金の数字を外部には『口外するな』と農協に指示している。でも現場は無視。公表の前でも農協からいくらでも漏れてきた。例えば、新潟で集荷の激戦地といえば、JA豊栄 (16年2月にJA新潟市と合併)だ。そこの生産者概算金はコシヒカリ一般で1万3200円。全農新潟が県内農協に示したJA概算金1万2800円。JA豊栄は独自に400円プラスしたことになる。隣接するJA北越後はJA概算金に加算なし。JA北越後の生産者は、隣の農協より400円も安いことに怒るはず。結局、ライバル業者へ米が流れて彼らが漁夫の利を得るのではないかな」
山形15農協の概算金から何がみえてくるか
収穫5シーズン目を迎えた新たな概算金制度のビフォー&アフターをまとめてみたい。検証材料は、公取委に摘発され制度の見直しの契機となった庄内地区5農協を含む山形県15農協の直近2年を取り上げる。対象は「はえぬき」1等(60kg)。
まず不思議なことがある。15農協のうち10農協がJA概算金を割り込んだ金額になっているのに、その差し引き分についてのきちんとした説明がない。
宮城県のある農協は、全農みやぎが示した1万3300円のJA概算金から500円差し引いている。農家に配布した文書には、ただ「JA経費留保分」という記述のみ。全農みやぎかその農協の経費分か。その具体的記述はなかった。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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