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特集

緊急セミナー ラウンドアップ問題を考える 誌上採録・前編

欧米や日本国内でラウンドアップ(有効成分グリホサート)の使用規制を求める声が相次ぎ、効果的な対抗手段を持たない農業経営者は理不尽な風評被害にさらされている。これ以上の風評被害拡大に歯止めをかけようと、科学的な視点と農業現場の観点からラウンドアップ問題を見直す「緊急セミナー『ラウンドアップ問題』を考える─科学を無視した世界規模の風評発生メカニズムを解く─」が10月21日、農業技術通信社主催で開催された。会場には120名を超える農家、科学者、マスコミ、消費者らが駆けつけ、この問題への関心の高さをうかがわせた。本誌では緊急セミナーの詳細を前編・後編の2回にわたって届ける。

講演録 本セミナーの問題提起

農業ジャーナリスト (株)農業技術通信社顧問 浅川芳裕

本セミナーが提起する論点をお伝えします。それはラウンドアップが直面している風評について、その構造を理解することです。図1をご覧ください。
図1の左側が、世界の科学者や専門家、研究機関の一致した結論です。それは、ラウンドアップには「発がん性はない」ということです。もちろん、厳密なリスク評価の結果です。
どんな研究・規制機関の見解が一致しているのか。代表的なところを挙げておきましょう。Efsa(欧州食品安全機関)、FAO(世界食料機関)、WHO(世界保健機関)、ECHA(欧州化学機関)、EPA(米国環境保護庁)、NIH(アメリカ国立衛生研究所)、カナダ保健省、APVMA(豪州農薬・動物用医薬品局等)、そして日本の食品安全委員会などです。
別の言い方をすれば、ラウンドアップは安全だと国際的に認められているわけです。その基準にもとづき、世界中、日本中の農場や公園、庭などで使われてきました。
しかし、問題は「発がん性はない」「安全な農薬」で「世界中で使われている」という国際的な評価は、まったく報道されません。そんな当たり前すぎる話は、ニュースにならないわけです。
次に図1の右側をご覧ください。ごく一部の専門家と多くの素人による、「おそらく発がん性がある」という見方です。これは、IARC(国際がん研究機関)が発表した分類にもとづいています(同じ分類に入っているのは、熱い飲み物や赤身肉などです)。こちらの見解はリスク評価をしていません。
しかし、「おそらく発がん性がある」「危険な農薬」という話は注目を浴びてしまう。つまり、ニュースになりやすいわけです。
さらに問題なのは、この分類にもとづき、カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)が発がん性物質のリストに加えたり、アメリカの裁判所や弁護士、陪審員たちがその見解に影響を受けてしまいました。その結果、左側の国際的・科学的な評価にも関わらず、「危険な農薬」という風評が広まっていき、現在にいたっています。
その何が問題なのか。次の図2のとおり、この農薬を使っている農場や農産物が風評被害を受ける原因となるのです。そんな風潮が現実のものになりつつあります。国の法律にもとづき、安全に使用しているにもかかわらずです。
そこで本日のセミナーの目的、このようにニュースにならず、注目を浴びていないこの左側の科学的な視点・見解を提供すると共に、農業現場で起こっている今の風評状況を皆さんと共有することにあります。

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