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山道弘敬の本質から目を逸らすな

「作保(も)つ庫」の夜明け


(2)の作物のキュアリングとは、収穫期間中の機械的な力で作物の表面についた傷を治すことを意味しており、温度と湿度条件が重要といわれているが、酸素が不足しているとキュアリングがまったく進まないことが報告されている。キュアリングが重要な理由は、傷を治さずに開いたままにしておくとそこから雑菌が侵入して腐敗する可能性が高くなり、開いた傷口から脱水して作物の重量が減少してしまうからである。このときに十分な酸素が必要なのである。試しに、北海道でよく使われている幅1.7m、奥行1.1m、高さ1.4mの大型スチールコンテナにカボチャ1t程度を収納した場合について検討してみよう。仮にカボチャの温度が20℃程度で容器に酸素が一切補給されないとした場合、カボチャの呼吸によって容器内の酸素はたった30分で消費されてしまうことになる。これは例えではあるが、それほど作物は激しい呼吸をしているのであり、キュアリングを促進するためには積極的な酸素補給が必要なことがおわかりいただけるであろう。
(3)の高い温度・湿度管理精度は当たり前に達成できるという冷蔵庫屋さんは少なくないが、筆者の話と冷蔵庫業者との話には大きな食い違いがある。それは、我々は部屋の空気の温度や湿度を言っているのではなく、作物のすぐそばの温度や湿度を指しているからである。弊社の作保つ庫では容器内の作物に温度センサーや湿度センサーを埋め込んで測定しており、その測定値に基づいて温湿度制御を行なうが、通常の冷蔵庫ではそんなことはしないし、できない。冷蔵庫では蒸発器の吸い込み側に設置した温度計で冷凍機を制御するのが普通であり、湿度センサーも作物に埋め込んだりはしない。は、作物に大きな影響を与えると考えられる作物近傍の温度や湿度を高い精度で制御することを意味しており、倉庫内の空気を制御することを目的としていない。いくら倉庫内の空気の温度を制御したところで、そのことは作物自体の温度やその近傍の湿度が制御されていることを意味していない。作物は発熱体であり、空気よりもはるかに熱容量が大きく、作物全体と周囲の空気が全体的に熱交換でもしない限り、このような高い温湿度制御は達成できない。高い温湿度制御ができないために、早く芽が出たり、過度に減耗が進んで脱水したり、さまざまな負の現象を引き起こすことになる。作保つ庫たる施設の最も重要なポイントはここにあるのである。

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