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実践講座:したたかな農業を目指す会計学 続・入るを計り出を制す!

夢を叶えるために「入るを計り出を制す」べし!

攻守のバランスを整えよ

この秋、日本人を熱くしたのは日本で開催されたラグビーW杯での日本代表チームの活躍だろう。私も感動した“にわかファン”の一人である。15人のチームは、スクラムを組む体格の良いフォワード陣と、走力とキック、パスで攻撃を繰り出すバック陣がいる。目まぐるしく攻守が切り替わる展開のなか、それぞれの持ち味を発揮するさまに固唾を呑んで見入ってしまった。
そのW杯の試合が一部中止になるなど影響を与えたのが、台風だ。千葉県に大規模停電(ブラックアウト)をもたらした15号に、長野を含む東日本の広範囲にわたって水害をもたらした19号―。北海道人からしても、テレビに映される被災地の映像には衝撃を受けた。
昨年来、この連載で赤裸々に自分自身の失敗と備えの重要性を語ってきたつもりだった。災害のない日常を前提に農業経営をしていると危機感が乏しいということが反省につながったので、被災後に発電設備など対策を打った。だが、よその地域で起きたことがまさか自分のところで起きるとは……と考えるのが、いまだに多くの人の現実かもしれない。
河川の決壊や暴風による被害を防ごうにも個人の努力では限界がある。しかし、停電も含む災害後の対応については、備えが運命を左右する。家族や従業員、取引先などを抱える事業者としては、そう楽観的でいてはいけないのだ。ましてや都市部に比べて、地域を守る役割を担うことの多い農業経営者の備えは、行政や農協だけを当てにしていてはいけないように思う。経営規模が拡大し、高齢化や人口減少の影響は少なくない。
しつこいが、備えあれば憂いなしである。「攻めの農業」を掲げるのも大事だが、攻めた分だけ守りの戦術も重要だ。アスリートがよく口にする「練習は裏切らない」というのも同じことと思う。日々あらゆる事態を想定して備えているかが、いざ災害に遭ったとき、事故に遭遇したとき、あるいは千載一遇のチャンスを得たときに問われることになる。連載の初回で、「なんとかなる」と腹を据えたうえで、「なんとかしていく」腹づもりが重要だと述べたとおりである。ラグビーW杯の熱狂からも攻守のバランスを整え、その切り替えを素早く切り替えよ、というメッセージを受け取ったと考えてみてはいかがだろうか。

会計はシンプルに捉えて緻密に積み重ねるのみ

では、攻守のバランスを経営管理に当てはめて考えみよう。規模を拡大したり、新しい事業分野に挑戦したり、技術体系を刷新したり、雇用を拡大したりする経営革新が「攻め」に当たるだろうか。一方、事故や災害に備えて機械等の部品をストックしたり、発電機を装備したり、帳簿に照らして買い控えをしたり、無駄を省きコストダウンを図ったりする行動に「守り」のイメージを抱かれるだろうか。あるいは、積極的に投資を進めるのが「攻め」で、利益をときには内部留保するなど経営の財布の紐を締めるのが「守り」かもしれない。このあたりは主観によるので、捉え方は人によって意外と異なるのではないかと思う。

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