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【土門「辛」聞】
「新潟コシ1等米20%」は県農林水産部による人災だった
- 土門剛
- 第183回 2019年11月29日
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ちょっと待って欲しい。フェーンなら新潟県の両隣の富山県や山形県などにも吹いた。新潟に負けず劣らずの高温に見舞われた。それで富山産コシヒカリが、新潟と同じような被害を受けたという話は聞かない。現に富山産の1等米比率は82.6%だった。ここは新潟だけに特別な事情があったと考えるべきだ。
もうひとつ気になる情報がある。なぜか農協出荷の農家に被害が多かったことだ。これを裏付けるのが、9月20日付け新潟日報の記事。
「猛暑の影響で未熟米が多く、1等米比率が10%未満で推移している地域農協(JA)が少なくない」
なぜ新潟だけが、そして農協出荷農家に目立ったか。この疑問に答えてみたい。
稲が高温障害に陥った場合、真っ先に疑うべきは、最近なら「基肥一発肥料」と呼ぶ緩効性肥料を使った場合の肥料切れという現象だ。
基肥一発肥料は、ご多分に漏れず、新潟でもよく使われている。詳しいデータはないが、普及率は5割か6割ぐらい。これだけ増えたのは、基肥一発肥料を使えば、春に基肥を施し、炎天下の夏場に穂肥を施す手間が省けるからだ。
穂肥部分だけが樹脂などでコーティングされていて、一定の積算水温に達すると、その被覆部分の小さな穴から肥料成分を溶出させる。どのタイミングで溶出するかは、気象データなどから積算水温を想定してプログラムのようにしてある。
便利な反面、厄介な問題も多い。最近のように異常気象で高温が頻発すると、溶出のタイミングが早まったりして、肥料切れを起こしてしまうことがよくある。稲が肥料を求めるタイミングで肥料が効かないのだ。「一発」とPRしながら追肥を推奨しているのは、その肥料切れに備えるためだ。
もうひとつ気になる情報がある。なぜか農協出荷の農家に被害が多かったことだ。これを裏付けるのが、9月20日付け新潟日報の記事。
「猛暑の影響で未熟米が多く、1等米比率が10%未満で推移している地域農協(JA)が少なくない」
なぜ新潟だけが、そして農協出荷農家に目立ったか。この疑問に答えてみたい。
農協扱いの肥料に被害が集中した
稲が高温障害に陥った場合、真っ先に疑うべきは、最近なら「基肥一発肥料」と呼ぶ緩効性肥料を使った場合の肥料切れという現象だ。
基肥一発肥料は、ご多分に漏れず、新潟でもよく使われている。詳しいデータはないが、普及率は5割か6割ぐらい。これだけ増えたのは、基肥一発肥料を使えば、春に基肥を施し、炎天下の夏場に穂肥を施す手間が省けるからだ。
穂肥部分だけが樹脂などでコーティングされていて、一定の積算水温に達すると、その被覆部分の小さな穴から肥料成分を溶出させる。どのタイミングで溶出するかは、気象データなどから積算水温を想定してプログラムのようにしてある。
便利な反面、厄介な問題も多い。最近のように異常気象で高温が頻発すると、溶出のタイミングが早まったりして、肥料切れを起こしてしまうことがよくある。稲が肥料を求めるタイミングで肥料が効かないのだ。「一発」とPRしながら追肥を推奨しているのは、その肥料切れに備えるためだ。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
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