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残念ながら気象はプログラム通りの展開にはならない。気象庁ですらスーパーコンピュータを駆使しても1週間後の天気予報を外してしまう。数カ月先の積算水温を予測することは不可能と考えるべきだ。
話を新潟に戻そう。新潟日報が報じた農協に被害が集中した点。基肥一発肥料は、農協に出荷しない農家も使う。なぜ農協に被害が集中したのか。その原因を突き止めるには、農協が扱った基肥一発肥料のことを調べてみる必要がある。
JA全農にいがたは、18年産から水稲用JA県下統一肥料と銘打ったコシヒカリ用「越後のかがやきシリーズ」を販売している。全農にいがたの説明は、「コシヒカリの5割減々、3割減々栽培向け肥料を県下JAで統一し、スケールメリットを活かして価格の低減を目指します」。「減々」とは、減農薬・減化学肥料のこと。5割とか3割というのは、化成系でなく有機質系の原料を使う度合いを示したものだ。
越後のかがやきシリーズのデビューは18年産から。その年は肥料切れというような問題は報告されなかった。それが19年産でなぜ問題が起きたか。原因究明の手がかりとなるのはここだ。
富山は同じ高温でも平年以上に1等米キープ
そこでシーズン通しての気温をチェックしてみた。便利な資料があった。北陸農政局作成の気象庁アメダス地点(新潟)の気温の推移を示したグラフ。10月31日公表の同15日時点での作況指数の資料に掲載されていたものである。
1シーズンに春と夏に異常高温のピークがあることが分かる。先に触れた8月のフェーンによる異常高温のほかに、5月の田植え直後にも季節外れの高温が続いていた。5月25日には魚沼市の同アメダス地点(守門)で、5月としては観測史上最高の31.5度を記録。同日付け新潟日報は、「(県内)多くの地点で7月中旬から下旬並みの暑さとなり、21地点で今年の最高気温を更新」と伝えていた。
高温による最初の異変が新潟の肥料関係者から伝わってきたのは6月中旬頃だった。
「田植え直後は気温が高く日照にも恵まれた。そのためか稲は過繁茂気味。草の先がダラっと下がっているのが気になった。根が弱いのかもしれない。とにかく稲姿のバランスはよくなかった」
そこへ8月のフェーンが襲った。14日に上越市で40.3度を観測。翌15日にかけて、35度を超す高温が県内全域を見舞った。品質低下の決定的要因と思われても仕方がないくらいの異常高温だった。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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