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とはいえ、もともと本気で原因究明する気持ちは微塵もない。それどころか、県農林水産部はすべての原因を異常高温に押しつけようとしている。そして火事場泥棒のように、「新之助」の作付け拡大の口実に使う。これも県農林水産部の企画プロデュースだ。座長役を務めた委員の新潟大学農学部の高橋能彦教授が研究会終了直後の記者インタビューで、県農林水産部の魂胆を次のように代弁していた。
「基本的な技術を踏まえ、中長期的な品種の構成が現在のままでいいのかということも検討したい」(新潟日報10月17日付け)。
新之助を想定したコメントのようである。その新之助は偶然にも1等米比率99%だった。晩稲品種でたまたまフェーンが出穂時期などにぶつからず幸いしただけのこと。たとえ高温に適応した品種であっても食味に劣れば普及は期待できない。
原因隠しのため県民を騙す場と化した研究会。どんなメンバーか。名簿をチェックすると以下の7名(技術に詳しい委員のみフルネーム)。新潟地方気象台長、森田敏・農研機構九州沖縄農業研究センター企画部長、星豊一・JA越後ながおか稲作技術指導統括、JA新潟県農協中央会農業地域対策部長、JA全農にいがた米穀部長、新潟県主食集荷商業協同組合(県集連)参事、新潟県農業共済組合連合会事業部長。
このうち学識レベルで稲作技術や肥料など農業技術を理解できるのは、座長の高橋教授と、森田企画部長、星稲作技術指導統括の3名のみ。高橋教授の専門は植物栄養学・土壌学。農研機構の森田企画部長は、水稲の高温登熟障害のプロ。この3月まで農水省技術会議研究調整官のポストにいた。星統括は新潟県農業総合研究所の所長からトラバーユ。実質、技術の話は地元事情に通じた高橋教授と星統括の2名が中心役。
第1回会合で配布された補足資料からも原因隠しのための研究会ということが裏付けられる。その資料名は下記の通り。(1)「水田地温の推移」(高橋委員提供)、(2)「窒素吸収量及び茎葉窒素濃度の推移」(農業総合研究所提供)、(3)「台風10号のフェーンについて等」(新潟地方気象台提供)。
まず(3)。最初に断わっておくが、あれれと思ったのは、最初のページの5日間の半旬ごとの気温の推移を示したグラフで、田植え直後の異常高温がカットされている点。結果として気象台は原因隠しにつながる資料を作らされたことになる。気象台は何も知らされずに片棒を担がされたようなもので何の責任もない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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