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悪質極まるのが(2)。稲が窒素成分をどう吸収しているかを知る資料だ。稲が窒素を順調に吸っていて肥培管理に何の問題もなかったと結論づけている。
悪質と断定したのは、試験研究の前提条件の記載がないことだ。このケースなら、最大の前提条件は施肥方法。基肥一発方式か、基肥・穂肥の分施方式か。それによって得られる答えは違ってくるはず。どうやら同研究所の実証圃での試験研究と思われる。それだとしたらオーソドックスな基肥・穂肥の分施方式。高温障害は起きにくい。
県農林水産部がいかにデタラメ極まる組織か、決定版のエピソードを紹介しておこう。森田企画部長に県内の稲作事情を説明した際、新潟の農家は基肥一発肥料を使っても7割が穂肥を施すと説明していた。ご本人から聞いた。肥料が原因と思わせないために、すぐバレるような嘘をついたようだ。
新之助でミソをつけ肥料でコシヒカリ自滅
過去最悪級の品質低下をもたらした一因とされる越後のかがやきシリーズ。商品企画を立てたのは新潟県農林水産部だった。販売の総元締めとして、全農にいがたが系統肥料メーカーの片倉コープアグリに製造を依頼、農協の統一銘柄として新潟県内23農協に納入する計画だった。
県農林水産部の異常なコミットぶりは状況証拠から説明できる。新潟県農業総合研究所に、同シリーズ「有機50スーパー元肥」の追肥効果について試験研究をさせていたことだ。それも16年からの3年間。研究成果は19年度の「研究成果情報」としてホームページにアップされている。
県農林水産部は不思議な行政組織だ。本来、民間企業がやるべきことを肩代わりしてやっていることだ。言うまでもないが、この種の試験研究は、本来、製造した片倉コープアグリか、製造を依頼した総発売元でもある全農にいがたが取り組むべきものである。その常識が、県農林水産部には通じないらしい。
これまた県農林水産部の失敗作、新之助、デビューして3年目を迎えたというのに、一向にブレークしそうな気配がない。概算金水準からすると低い価格で売られている。そのためか東京で放映されるテレビCMでよく目にするのは、北海道産米を担ぐマツコ・デラックスばかり。
今回の新潟コシ品質低下は、新潟県農林水産部による人災と断定しても間違いがない。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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