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特集

緊急セミナー ラウンドアップ問題を考える 誌上採録・後編


小島 唐木先生の講演にもありましたが、科学だけでは人の心は動かない。ラウンドアップ裁判の要諦はどちらの主張が科学的に正しいかではなく、どちらの弁護士が陪審員の心を掴むのに長けていたかだったようです。次に、現場からのご意見として水木さんお願いします。

生産現場からの報告、無農薬りんごの危険性

水木 青森でりんご農家をしている水木です。品評会で何度も賞をもらっているおいしくて安全なりんごを作っていますので、ぜひみなさんお買い求めください。
ラウンドアップは私が小中学生の頃から農家で使うごくありふれた農薬の一つです。りんごの木の下に生えてくる雑草は刈り取るんですが、それでも対処できない雑草を取り除く除草剤として例年使用しています。
何十年も現場で便利に使ってきて安全性も保証されているラウンドアップに関して、ウソの情報発信が続いて大変迷惑しています。ラウンドアップを販売しているJAは一切、デマだという情報発信をしませんし、現場の農家たちは農業技術通信社の昆吉則社長がセミナーの冒頭でおっしゃったように、風評被害を恐れてモノが言えず、情報発信の対抗手段がない状態です。私はそれでも自ら誤解を解くための情報発信を個人でしたり、直接消費者から電話がかかってきたときなどはラウンドアップの安全性について科学的に説明してたいていは納得してもらっています。もちろんウソ情報を信じて絶対納得してくれない消費者も一部にはいます。
ただ、科学的根拠のないウソ情報を政治家など社会的影響力の強い人に発信されて一般消費者の不安がこれ以上広がると、我々生産者の販売に影響が出かねませんし、ラウンドアップが日常的に使用できない事態に陥れば、直接的に生産に支障をきたしてしまいます。
小島 水木さんたちの周辺地域には、「奇跡のりんご」で知られる無農薬栽培の農家がいますね。農薬を使うりんご農家の方たちは無農薬のりんごをどう見ているのですか。
水木 すごく冷めているし、本当に無農薬なのか、というのが正直な感想です。例えば近畿大学森山達哉教授の研究によると、農薬を使用したりんごよりも、無農薬のりんごのほうが含有するアレルギー物質が5倍になるというデータがあります。りんごに限らず農作物は、病害にやられると自分の種を守るために「天然の農薬」を作り出す仕組みを備えているからです。アレルギー持ちの消費者にとっては無農薬のりんごほどリスクの高いものはない。そういう根拠のあるリスク情報は発信されずに、「農薬を使うと危険」といった漠然とした情報で不安を煽り、消費者に無農薬商品の購入を働きかける手法が横行しています。生産農家として有効な対抗手段がない現状が残念でなりません。

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