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特集

緊急セミナー ラウンドアップ問題を考える 誌上採録・後編


唐木 やはり米国は訴訟社会で、何かあれば裁判で解決するのが当たり前という社会風土が一つ。もう一つは、懲罰的賠償という日本にはない独自の制度のせい。さらに浅川さんが訴訟ビジネスに言及されましたが、弁護士の数が圧倒的に多いこと。日本の3万数千人に対して、米国は100万人以上いて、彼らが食べていくためには訴訟の種を自ら掘り起こしていかないといけない。米国滞在中にテレビをつけると、ラウンドアップ裁判の原告を募集する弁護士事務所のCMが多数流れていた。米国の特殊性が背景にあるので、日本で同様の事態が多発するとは思えません。
小島 それは少し安心しました。では次に、日本国内の国会議員らの調査で人間の髪の毛に残留した0.1ppm(0.1gの100万分の1)前後のラウンドアップの有効成分が検出された件です。化学物質の性質は異なりますが、水銀はもっと高い値で髪の毛に残留していますが、全く問題にはなっていません。青山さん、0.1ppmのリスクをどう評価すればよいでしょうか。
青山 食品安全委員会のサイトに入って、グリホサートの農薬評価書を見てもらうのが一番なのですが、一日当たりの摂取許容量(ADI)は、1mg/kg体重/日と設定されています。さきほど講演で説明した通り、ADIは動物試験で得られた最も低い無毒性量(安全とされる量)の100分の1以下で、その許容量と比べても比較にならないくらい微量の残留値なのですから、人体には無害のレベルということです。
小島 やはり無害ですか。しかし、ラウンドアップを標的にする人たちは、0.1ppmの微量といえども残留することがわかった以上は、予防原則に基づいて規制(使用禁止)すべきだと主張します。彼らの会合では「量とリスクの関係」に関する質問が出ていましたが、一切明確な答えは返ってきませんでした。
常識的に考えて、ラウンドアップなど農薬と一番接触しているのは長年使用している農業生産者だと思います。彼らを追跡したような疫学調査は行われていますか。
唐木 もちろんあります。米国では、農薬を使用する農業従事者と農薬を使用しない農業従事者を何万人も集めて、その後の病気の経過などを25年ほど前から追跡しているAgricultural Health Studyというコホート型の疫学調査をしています。ラウンドアップを含めた農薬使用者と不使用者との間に、がんの発生率に有意差(違い)はなかったというのが、これまでの疫学調査の結果です。

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