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特集

緊急セミナー ラウンドアップ問題を考える 誌上採録・後編


小島 IARCの評価では飲酒やハム・ソーセージはグループ1に分類されているけれども、警告の表示義務を課されていないし、裁判も起こされていない。ちゃんと相手を選んでいるわけですね。
浅川 基本的には裁判にかかるコストを回収でき、さらに多額の賠償金が見込める企業にだけ訴訟を起こすのが彼らのやり方です。それでも米国の農業者は闘う姿勢を見せていて、コーヒーがグループ2に分類されたときに、カリフォルニア州から表示義務を課された米国の生産者団体と米スターバックスが表示義務の撤回を求めて訴えたケースがありました。最終的に表示義務の撤回を命じる判決が下りました。
唐木 コーヒーは2016年にグループ2からグループ3にIARCの分類が変更されました。世界中の研究者が10年以上にわたってコーヒーに発がん性はないという論文をたくさん出し、IARCの判断を変えさせることに成功したケースです。時間はかかりますが、一つの対抗手段ですね。

99.7%の農地で使用される農薬危険説をメディアは疑え

小島 最後に農家の水木さんからラウンドアップを含めた農薬の情報発信に関する要望や提言をお願いします。
水木 青山さんや唐木さんの講演を聴いて、農薬の安全性を再確認しました。日本の99.7%の農地では農薬が使われていて、使用されていない農地はわずか0.3しかありません。にもかかわらず、農薬に関する情報の多くは有機栽培の農家から発信されています。つまり、農業生産の実態と農薬の情報量が逆転しているのが今の状況です。そのため、「農薬は危険」で「無農薬が安全」という間違った情報が流布しています。メディアの方々はこうした情報の偏りと世間に広がる俗説を正す責務があると思います。さもないと消費者に被害が及びますし、表に出ないだけで被害は現実に出ていると思います。
ヴィーガンやオーガニックが健康にいいという情報ばかりが世の中に広がりつつありますが、本当にそうなのか。科学的データに基づくエビデンスはあるのか、きちんと調べたうえで報じる。過去の報道が間違っていたりエビデンスがないなら訂正する。メディアとして当然のことをしてほしい。
最初に無農薬りんごの危険性を指摘しましたが、農薬を使用しないリスクとデメリットも消費者に正しく伝えていただきたい。例えば小麦は農薬を使用しないと猛毒のカビが生え、海外ではそのカビによる死亡例もあります。我々生産者は安全でおいしい農作物を生産すると同時に、いつでもほしいときに手に入る農作物を提供したいという思いもあります。流通や保管まで考えると、農薬や添加物の適切な使用が最も安全性が高く、効率的で低コストの生産供給方法だと私は思います。

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