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農業は先進国型産業になった!

日本ワイン比較優位産業論 現地ルポ 第12回 ワインツーリズムのまちづくりエッセイストの構想が実現ヴィラデストワイナリー(長野県東御市)



【ワインアカデミー事業】
ヴィラデストは、ワイン産業の人材育成もできる機関があれば、ワイン産業の裾野はもっと広がるはずとの想いで、15年に「千曲川ワインアカデミー」(玉村豊男代表)をオープンした。同アカデミーは、ブドウ栽培、ワイン醸造、ワイナリー起業や経営のノウハウを教えている。土地を手に入れるサポートをするなど、新規参入のハードルを下げる手伝いも行なっている。
15年に始め、現在5期目(1年制、講義30回、授業料30万円)、受講生は年間20~30名である。既に卒業生が90名いるが、うち40名はブドウ栽培を始めている(千曲川流域が多い)。表2のNo.6~8は当アカデミーの卒業生であり、早くも3人がワイナリーを開業した。
受講生は若い人も、60歳超もいる。平均45歳。「40、50を過ぎた人たち
が、残りの人生をワインと共に豊かに暮らしたい」と入学してくる。“脱サラ”志向だ。地元出身ではなく、関東から来る人が多い。現在の5期生は36名である。過去最高であり、入学志望者の勢いは衰えていない。
今回は取材してないが、若い人たちは自己表現できる産業としてワイン造りを選んでいる人が多い。野菜やコメで1億円売り上げても世界に自分をアピールできない。ワイナリーは3000万円の小規模でも自分をアピールできるという思いから職業選択している(本誌同8月号、拙稿「ドメーヌ タカヒコ」論「現地ルポ第7回」参照)。彼らは「ワイン造りは最高の職業」と考えている。筆者は40年前、「農民は最高の職業である」と小論を書いたが(注)、ワイン産業はそれを実証している。うれしい限りである。
注:拙稿「農民は最高の職業である」労働省職安局『職業安定広報』1980年6月21日号3頁(巻頭言)。同じ思想は拙著『農業・先進国型産業論』日本経済新聞社1982年ほか。ただし、当時と現在は内容にシフトが見られる。若者が“車”に「ステータス」を感じた時代から、今や車離れは明瞭であり、精神的な豊かさに価値を置く時代に移っている。同じように、かつては医者や弁護士がウイークエンドファーマーにステータスを感じていた時代から(ニュージーランド)、今やステータスシンボルにではなく、自己表現できることに価値を見出している。育て、創造する喜びである。

【ゆりかごの役割アルカンヴィーニュ】
2015年、ヴィラデストは兄弟ワイナリー「アルカンヴィーニュ」を開業した。“委託醸造”を主業とするワイナリーである。

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