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すると、ネギの他作物に比べた長所もわかってきた。野菜の中で一番工業的な生産ができるのだ。収穫・調製が機械化されており、今日収穫しなければダメになるというものでもない。加えて、野菜の中では出荷期間が長い。多くの野菜の出荷期間が1、2カ月にしかならない中、秋田で5カ月にもわたって出荷できるのは魅力だった。
目指す値段から作業コストを逆算
とはいえ、ただ作っても面白くない。目を付けたのが業務用ネギだ。中国産は人件費の上昇の影響で、価格が上がる傾向にある。そうではあるけれども、普通に生産したのでは価格で競争することはできない。
「生食用に一切目を向けず、生産の効率性を極めようと決めた。あとは目指す値段からの逆算。一つひとつの作業をいくらに抑えるかと考えた。やっと目指す形が見えてきた気がする」
目指すのは、国内の業者が中国産輸入ネギを国内で買う値段。その価格で出荷するために各作業の費用を割り出した。
ネギの労働時間は収穫・調製・出荷の比重が高い。一般的な栽培では収穫・調製・出荷で労働時間の7割ほどになる。
「7割を簡素化できれば相当なコストダウンができる」
作業のスピードアップのため、機械を改造した。皮むきに使う機械の処理能力を1.5倍に上げたのだ。機械の処理能力は今後も向上させるつもりだ。
収穫作業の自動化を構想
さらなるスピードアップのため、機械の自動化の構想も持つ。今の収穫のやり方は、収穫機が掘り取ったものを、束ねて縛ったうえで、布を巻き、トラックに積む。畑から作業所まで運んで降ろし、そこで皮をむく。何度も持ち上げたり降ろしたりする手間がある。
ネギを束ねる間は収穫機が止まっているため、「作業時間の良くて半分しか掘っていない。下手すると作業時間のうち、機械が動いているのが4割、止まっているのが6割くらいになる」。機械が止まる時間がなくなれば、今、2台の収穫機が必要な作業を1台でできる計算になる。
そこで考えているのが収穫機に自動運転の運搬車を追随させること。例えば、掘り取ったものを、運搬車が持つ鉄コンテナに直接排出できるようにし、コンテナが一杯になったら、トラックに自動で運んでいくようにできないか。圃場によっては、作業所が隣接しているので、運搬車でそのまま作業所まで持っていけないかと考えている。
「もし作るとなると、鉄コンテナ自体をネギに合わせて作らないといけない」
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宮川正和
(有)正八
代表取締役
1962年11月生まれ。東京農業大学卒業後、大潟村第一次入植者の父のもとで就農。コメ政策が転換期を迎えていた94年に正八を設立。97年には稲作をやめ、野菜や花卉などで新しい経営を目指す。生産から加工、販売・流通のすべてにわたってコントロールできる農業を模索している。
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