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その後、日本の社会も農薬の内容も変わっていきましたが、今でも1960年代のレーチェル・カーソン(著書『沈黙の春』で、農薬利用される化学物質の危険性を取り上げた)以前のままだと考えている人も多くいますよね。
唐木 農薬を不安に思っている人が多い原因の一つは、「農薬は安全!」とだけいって、信用を失ったことがあります。農薬は少量なら安全、大量なら危険です。だから量を厳密に守って安全を保っているという量の観点の話をしないと、真実を語ってないと思われてしまいます。
紀平 農薬の安全性評価は当たり前ですが、なぜか薬害試験も残しています。薬害が出る農薬は今は使用できないので、薬害試験はもう不要だと思うのですが。
唐木 薬害試験は、作物に対する影響を調べるものなので、必要だと思います。人に対する影響は、食品安全委員会が調べています。
森田 平成15年(2003年)に内閣府に設置された食品安全委員会は、食品安全の取り組みを強化して、食品衛生法改正を求める1370万もの消費者の署名で作られたものです。リスクを評価をする仕組みを公開し、消費者のために透明な仕組みを作りました。多くの消費者団体は、これをきっかけとして、農薬や添加物のことをむやみに危険視しない方針へと転換しました。
インターネットを中心に広がる新たな「食の不安」――リスク評価を無視した情報拡散
紀平 現在は、どのような食の安全の議論がされているのでしょうか。
森田 食の安全に関する議論は、大規模食中毒やBSE、中国餃子問題が起こった2000年代がピークでした。その後は、2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故に関連した放射能に関心が集まりました。現在は、食の安全に関する議論は落ち着いているように見えます。
一方で、添加物や残留農薬、遺伝子組換え技術に関して、食品安全委員会のリスク評価を無視した不安を煽る情報は、週刊誌やインターネットで発信され続けています。国のリスク評価やリスク管理の取り組みは一般消費者に届きにくく、「危ない」情報の方を信じてしまう人がいます。
彼らにどのようにアプローチすればいいのか。たとえば若い世代に届けようと、消費者センターが託児付きでイベントを実施しています。
唐木 「残留農薬怖い」「添加物怖い」「遺伝子組換え怖い」という人が増えたときに、社会にどんなリスクがあるのかがポイントです。もしマイナスでないのであれば、そのままでよいのですが、食品供給の安定性を損なうものであれば、なんらかの対策を取らなければいけません。今はそのような人の数が少ないのでマイナスが明確に出ていないし、将来も出る予測が立っていません。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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