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科学の社会になったことで、多くのことが変わっています。食品関係では、(1)リスク、(2)メディア、(3)価値判断の3つが大きく変わりました(参照:下段記事「食品をめぐる近年の状況変化」)。しかし人間の考え方は、まったく変わっていません。だから現在では「新しい社会と古い人間の調整」が必要です。
なぜリスクコミュニケーションが必要か――情報の量と質アンバランス是正
唐木 現在流通している情報を分析すると、安全情報が1に対して危険情報が9の状態です。情報量のアンバランスが非常に大きい状態。この状況を改善するのが、リスクコミュニケーション(注)の一つの役割ですが、それには資金と組織力が必要です。国が関与すれば早いのですが、私たちはないので知恵を使うしかありません。
紀平 量だけではなく、誰が発言するかも関係していますよね。例えば、専門家の解説より、一般市民の発言をメディアで取り上げた情報を信じる人が多くいます。
唐木 科学より物語を信じる。それが脱真実社会です。科学者は客観的に事実のみを伝え、物語は好まない傾向があります。そのため事実ではない物語情報が、インターネットメディアに拡散されたり、一般市民に信じられたりしてしまいます。そのような発言に対しても、リスクコミュニケーションをしなければいけません。
久松 たとえ科学的に正しくなくても、人が不安に思うことを他者が責めても意味がないと思います。電磁波が怖い人は、電子レンジを見るだけで頭が痛くなります。その頭痛を取り除いてあげたいのなら、それが現実的に物理空間で起きている現象であるかどうかとは別に、頭痛そのものは認めてあげなきゃ。つまらない何かに騙されているのかもしれませんが、思い込みによって頭痛は起きること自体は、生き物として普通のことです。
注:リスクコミュニケーションとは、社会を取り巻くリスクに関する正確な情報を、行政、専門家、企業、市民などの関係者で共有し、相互に意思疎通を図ることをいう。
伝えるメディアもシナリオありき――物語情報で強力なプロパガンダ
紀平 科学より物語を信じるといえば、ドキュメンタリー映画ですね。その影響を受け、ベジタリアンになる人がいるように、映画もまた何かに傾倒するきっかけになっていますね。農村部から遠く、農業に憧れがある都市部の若い人ほど影響を受けやすいと思っています。
唐木 映画の効果は大きいですよ。遺伝子組換え反対運動は、映画を効果的に使っています。それによって、反対意識を植えつけられた人もいます。
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紀平真理子 キヒラマリコ
1985年、愛知県生まれ。2011年、オランダへ移住し、食や農業に関するリサーチ、本誌や馬鈴薯専門誌『ポテカル』への寄稿を開始。2016年、オランダVan Hall Larenstein University of Applied Sciences農村開発コミュニケーション修士卒業。同年10月に帰国し、農業関連記事執筆やイベントコーディネート、海外資材導入コーディネート、研修・トレーニング、その他農業関連事業サポートを行なうmaru communicateを立ち上げる。今年9月、世界の離乳食をテーマにした『FOOD&BABY 世界の赤ちゃんとたべもの』を発行。食の6次産業化プロデューサーレベル3認定、日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格。
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